ベトナム株式は17年に48%も上昇して、投資家の注目を集めているようです。年明けには外国人による投資が急増しています。VN指数のチャートだけを見ると「高所恐怖症」になりそうですが、実はベトナム・ドンが対ドルで下落基調となっているため、ドル建では14年の高値まで達していません。グローバルの機関投資家には買い余地があると見えている可能性が高く、引き続き注目できるでしょう。
図表1:ベトナム株式に投資するETF(上場投資信託)
取引 | チャート | コード | 銘柄 |
---|---|---|---|
VNM | ヴァンエック ベクトル ベトナムETF(VNM) | ||
03087 | dbx FTSEベトナム(03087) |
※SBI証券が作成
ベトナムの株の代表的な株価指数であるVN指数は17年に48.0%上昇して、世界の株式市場の中でも目立った上昇となりました。
ベトナムVN指数のチャートを見ると、あまりに急ピッチの上昇に短期的な過熱感は否めませんし、この水準が持続可能なのかとの疑問が生まれるかもしれません(図表2)。
しかし、通貨のベトナム・ドンは対ドルで下落基調となったため、ドル建ての「ヴァンエック ベクトル ベトナムETF」の価格は、17年に大きく上昇したとは言え、14年高値の更新には至っていません。ドルベースで評価するグローバルな機関投資家にとっては、まだ、買い余地のある市場に見えている可能性が高そうです。
実際、ベトナム株式に対する外国人投資家による証券投資は昨年11月から増加傾向で、年明けには週間50〜60百万ドルと過去10年にないレベルに膨らんでいます(図表3)。ベトナム市場は、主となるホーチミン取引所の時価総額が約14兆円と小さく、資金の集中によって意外な高値に進む可能性がありそうです。
上昇ピッチが速まった過去3ヵ月に上昇をリードした銘柄を見ると、時価総額トップのベトナム乳業が42%、同2位のビングループが55%、同3位のベトコムバンクが46%、同4位のペトロベトナムガスが55%と国を代表するような大企業を中心に大幅な上昇となっています。個別銘柄云々というより国全体の成長を買うような資金が流入していると考えられます。
このような動きの背景として、以下が考えられるでしょう。
(1)世界経済の回復、中国経済の安定を受けてベトナムの経済指標は夏場以降上向いた
(2)香港のジャーディンマセソンのビングループへの投資(発行済株式の5.5%)が外国資金の流入を刺激した
(3)ビングループのショッピングモール子会社、ビンコムリテール上場の成功が市場を刺激した
ベトナム市場のファンダメンタルズを確認すると、主要経済指標では、17年10-12月期の実質GDPが前年比6.81%増と市場予想の6.75%増を上回ったほか、12月の月次指標で、小売売上高が前年比10.9%増(11月は同10.7%増)、12月の鉱工業生産が前年比11.2%増(11月は同17.2%増)、12月の輸出は前年比21.1%増(予想は同21.2%増)、輸入が同20.8%(予想は21.1%増)、日経ベトナム製造業PMIは52.5(11月は51.4)と概ね好調でした。
鉱工業生産は伸び率の低下が目立ちますが、例年よりも好調と言われる米年末商戦に向けた作り込みの反動の可能性があり、昨年初めからの改善基調は維持されていると見られます。
企業業績については、VN指数採用企業のEPSは17年12月期に前年比19%増、18年12月期は同13%増と好調が見込まれています。VN指数の予想PERは株価の上昇を受けて18年12月期基準で18.1倍まで上昇し、決して低いとは言えない水準です。
ただ、世界経済は緩やかながらも改善傾向が続いており、同時に世界経済のリスクとなり得る要因が少なくなっていることから、予想PERは上昇しやすい環境にあると言えるでしょう。6%半ばのGDP成長を続ける国のPERとしては、まだ上昇余地があるのかもしれません。
外国人投資家の注目が高まっているベトナム市場は引き続き有望市場として注目できるでしょう。
一方、ベトナム株式に投資する際のリスク要因としては、新興国株式に共通するものですが、米長期金利が急上昇する可能性があげられます。米国の金利が急上昇すると新興国からの資金流出が懸念されるためです。
米長期金利は税制改革の成立による景気浮揚や原油価格上昇によるインフレ率上昇への期待から、2.5%台に乗せています。トランプ大統領の経済政策への期待を背景に16年12月、17年3月につけた2.6%強のダブルトップを超えてくるかどうか、当面は注意が必要と見られます。
図表1は、当社が取り扱うベトナム株式に投資するETFです。「ヴァンエック ベクトル ベトナムETF」は、NYSEアーカ市場に上場する「マーケット・ベクトル・ベトナム・インデックス」への連動を目指すETFです。同インデックスは、ベトナム株式で流動性の高い大企業から組成されています。
「dbx FTSEベトナム」は、香港市場に上場する「FTSEベトナム・インデックス」への連動を目指すETFです。同インデックスは、外国からの投資が十分可能である約20銘柄から組成されています。
図表2:ベトナム株のETF価格はドル建、円建では高値まで至らず
注:ベトナムETF(ドル建て)は、「ヴァンエック ベクトル ベトナムETF」の価格、ベトナムETF(円建て)は、「ヴァンエック ベクトル ベトナムETF」の価格を円換算したものです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:外国人による証券投資が急増、ここ10年ないレベルに到達
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4:経済指標は改善基調
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成