今回は、今話題のESG投資−環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)への取り組みを評価して行う投資− ができる海外ETFを中心にご紹介いたします。
図表1:ESG投資とクリーンエネルギーのETF(上場投資信託)
取引 | チャート | コード | 銘柄 |
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SUSA | iシェアーズ MSCI 米国 ESG セレクト ETF |
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ICLN | iシェアーズ グローバル・クリーンエネルギー ETF |
※SBI証券が作成
10/18(水)の日本経済新聞の1面トップ記事は、「ESG投資 市場の3割に」でした。
それによると、「世界の株式市場で財務数字に表れない企業の「見えない価値」に着目して投資先を選ぶ動きが広がっている。新しいモノサシの代表格が環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)への取り組みを評価する「ESG投資」だ。投資残高は約23兆ドル(約2,600兆円)と世界の運用資産の3割に迫り、日本でも公的年金を中心に取り入れる動きが相次ぐ。」としています。
「運用資産の3割」というのは、想像していた以上に広がっている、との印象を筆者は持ちました。そこで今回は、当社で取り扱う海外ETFより、「iシェアーズ MSCI 米国 ESG セレクト ETF」をご紹介いたします。
同ETFはMSCIの「米国ESGセレクト・ソーシャル指数」への連動を目指すもので、同指数の銘柄選択はMSCI社が定める選択基準に基づいてアナリストによって数値化され、決定されます。
具体的には、産業によってESG投資の評価に重要と考えられる「キーイシュー」が6〜10個選定され(図表2)、これに対する各企業の取り組みがMSCIのアナリストによって評価されます。キーイシューのスコアは、ウェイト付けされて加重平均されます。「加重平均キーイシュー・スコア」は最終的に産業ごとに標準化され、これを元に「ESG格付」が決定されます。
このような選択過程を経て選ばれた、上位組入れ銘柄が図表3です。各産業(業種)の中で「ESG格付」が相対的に高い銘柄ということになります。組入れトップのマイクロソフトは、同社ホームページの企業概要に「Corporate Social Responsibility」という専門セクションを設けて、同社の取り組みに対する理解を図っており、この分野への意識の高さが窺えます。
同ETFの値動きをS&P500指数と比較すると、ほぼS&P500指数に連動しており、差異は小さなものにとどまっています(図表4)。
ただ、S&P500指数とパフォーマンスが変わらないというのは、年間0.5%の経費がカバーされているということですので、「ESG投資」には市場平均を上回るリターンを稼得する力があったと言えるでしょう。
また、ESGのスコアが高いことは、様々な方面でリスクが低い企業だと考えられます。リスクが低い銘柄で、市場平均並みのリターンがあがっていることにも意味があると言えるでしょう。
純資産額は635百万ドル(約700億円)で、さほど大きなETFではありませんが、15年からの推移を見ると着実に積み上がっている印象です。資産運用コミュニティでの採用が広がると、今後は意味のある差異が出てくる可能性もあるとみられ、注目できるでしょう。
また、ESG投資の重要テーマの一つである、クリーンエネルギーの関連企業に分散投資できるETFも当社では取り扱っています。併せてご検討してみてはいかがでしょうか。
図表2:MSCI社のESG投資の評価基準
3つの柱 |
10のテーマ |
キーイシュー |
---|---|---|
環境(Environment) |
気候変動 |
二酸化炭素排出、製品カーボンフットプリントなど |
天然資源 |
水資源枯渇、責任ある原材料調達、生物多様性と土地利用など |
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廃棄物管理 |
有害物質と廃棄物管理、包装材廃棄物、家電廃棄物など |
|
環境市場機会 |
クリーンテクノロジー、グリーンビルディング、再生可能エネルギーなど |
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社会(Social) |
人的資源 |
労働マネジメント、労働安全衛生、サプライチェーンと労働管理など |
製品サービスの安全 |
製品安全・品質、安全な金融商品、プライバシー&データセキュリティなど |
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ステイクホルダーマネジメント |
紛争メタル |
|
社会市場機会 |
情報へのアクセス、金融へのアクセス、ヘルスケアへのアクセスなど |
|
統治(Governance) |
コーポレートガバナンス |
取締役会構成、報酬、オーナーシップと支配など |
企業行動 |
企業倫理、公正な競争、汚職と政治不安など |
注:キーイシューは抜粋です。
※MSCI社の資料をもとにSBI証券が作成
図表3:「iシェアーズ MSCI 米国 ESG セレクト ETF」の組入れ銘柄
銘柄(コード) |
業種 |
組入れ比率(%) |
---|---|---|
マイクロソフト(MSFT) |
情報技術 |
5.14 |
スリーエム(MMM) |
資本財・サービス |
4.76 |
アップル(AAPL) |
情報技術 |
3.77 |
アクセンチュア A(ACN) |
情報技術 |
3.75 |
エコラブ(ECL) |
素材 |
3.60 |
ロックウェル コリンズ(COL) |
資本財・サービス |
2.62 |
ブラックロック A(BLK) |
金融 |
2.44 |
アルファベット A(GOOGL) |
情報技術 |
2.41 |
カミンズ(CMI) |
資本財・サービス |
2.33 |
ヘンリー シャイン(HSIC) |
ヘルスケア |
2.16 |
注:2017/10/17時点です。
※ブラックロック社資料をもとにSBI証券が作成
図表4:「iシェアーズ MSCI 米国 ESG セレクト ETF」の値動き

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成