世界の多くの株式市場が調整ムードとなる中、インドネシアのジャカルタ総合指数は8/23(水)に年初来高値を更新して、堅調さが目立っています。一段高が期待できるか、検討してみましょう。
図表1:インドネシア株式に投資するETF
取引 | チャート | コード | 銘柄 |
---|---|---|---|
EIDO | iシェアーズ MSCI インドネシア ETF(EIDO) | ||
IDX | ヴァンエック ベクトル インドネシア ETF(IDX) | ||
03099 | db x MSCI Indon(03099) |
※SBI証券が作成
世界的に多くの株式市場が調整ムードに包まれる中、インドネシアのジャカルタ総合指数は8/23(水)に年初来高値を更新して堅調です(図表2)。一方、年初来の上昇率では11%と新興国株の中では出遅れ感もあります。ここから一段高が期待できるか検討してみましょう。
まず、最近の堅調相場の中身ですが、過去1ヵ月のジャカルタ総合指数の上昇に寄与しているのは、テレコムニカシ インドネシア(TLKM)、バンク セントラル アジア(BBCA)、ハンジャヤマンダラサンプルナ(当社の取扱いなし)、ユニリーバ インドネシア(UNVR)など時価総額上位銘柄群です。マクロ的な要因を背景としたインドネシア株式全般への物色と言えそうです。
そこでインドネシア経済について確認すると、8/7(月)に発表された4-6月期実質GDPは前年比5.0%増と1-3月期と変わらずで、同5.1%増の市場予想をやや下回りました。個人消費の伸び悩みや政府支出の低下が響いています。しかし、比較的高い成長率が維持され、17年下期は前年比5.2%増、18年は同5.4%増と成長率の加速が見込まれているため、株式の投資環境として良好と言えそうです。
また、同国の中央銀行は、8/22(火)に政策金利を4.75%から4.50%として、昨年10月以来10ヵ月ぶりとなる利下げを実施しました。物価動向が落ち着いていることに加え、米国の利上げは緩やかとの見方が広がってきたことが背景と見られます。今後の利下げ余地も広がっていると考えられ、成長率が鈍化する場合でも金融政策による下支えが期待できるでしょう。
一方、企業業績は好調です。ジャカルタ総合指数採用企業のEPSは、17年12月期が前年比54%増、18年12月期が同14%増と16年12月期までの停滞した状態から大幅な増加が見込まれています(図表3)。金融、エネルギー、素材、インフラ・公益などのセクターが利益増を牽引する見通しです。
予想PERは、17年12月期の予想EPSに対して16.9倍です。10年以降の13〜18倍のレンジでは比較的高めに位置しますが、企業業績の大幅増が見込まれる環境下では許容範囲と言えそうです(図表4)。また、18年12月期の予想EPS基準では14.7倍と、レンジ仲値の15.5倍を下回る計算です。時間の経過とともに割安感が出てくる水準と言えそうです。
堅調な経済成長、政策金利の引き下げ余地、好調な企業業績、上昇余地の残るPERを背景にジャカルタ総合指数は一段の上昇が期待できそうです。
尚、ジャカルタ総合指数で業種ウェイトが28%と最大の金融セクター指数は、資産内容の改善が好感されて、安定的な上昇が続いています(図表5)。ジャカルタ総合指数の上昇を牽引すると期待できるでしょう。
一方、リスク要因として、米国の金融政策がタカ派的なスタンスに傾いて新興国からの資金流出が懸念されるケースや足もとで改善基調となっている中国経済の減速などがあげられます。ただ、インドネシア経済は外需への依存度が低いことが特徴で、このようなリスクから受ける影響は、新興国市場の中では相対的に小さいと考えられます。
図表2:年初来高値面合わせのジャカルタ総合指数
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表3:企業業績はここ数年の停滞から大幅増益に転じる予想
注:ジャカルタ総合指数採用企業のEPSの推移で、17年と18年はBloombergの集計によるコンセンサス予想です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4:PERには上昇余地!?
注:ジャカルタ総合指数と同予想PERの推移です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5:安定した上昇を続ける金融セクター指数
注:ジャカルタ総合指数の金融セクター指数の推移です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成