年初来上昇基調のインド株式市場の現状を確認してみました。利食い売りの増加やPERの上昇などを背景に、短期的には上昇一服となりそうです。一方、中期的にはモディ首相による経済改革の進展に期待できるため、引き続き買いスタンスで臨んでよい市場と見られます。
図表1:インド株関連のETF
取引 | チャート | コード | 銘柄 |
---|---|---|---|
EPI | ウィズダムツリー インド アーニングスF(EPI) | ||
SCIF | ヴァンエック ベクトル インド小型株 ETF(SCIF) | ||
INDL | DirexionデイリーMSCIインド株ブル3倍ETF(INDL) | ||
02836 | iS SP BSE インド(02836) | ||
03015 | db x CNXニフティ(03015) |
※SBI証券が作成
年初来好調な上昇が続いていたインド株式市場(センセックス指数)が8/2(水)をピークに8/14(月)にかけて比較的大きく調整しました。
株価調整の要因として、以下をあげることができます。
(1)年初来の株価上昇率が19%に達していて利食いが出やすかったこと
(2)予想PERが20倍台まで上昇、高値警戒が出やすかったこと
(3)企業の景況感など足もとの経済指標が悪化していること
(1)については、年初来買い越し基調にあった外国人投資家のネット売買は7月にマイナスに転じ、8月も15日までの累計で売り越しとなっています(図表2)。利食いが出ているようです。
(2)については、インドの成長率は7%近傍と高いため、予想PERが他の市場よりも高くなるのは妥当と考えられます。ただ、13倍台、14倍台の市場がある中では、相対的に割高との見方が出やすく、また、同国市場の過去との比較でもやや高めです(図表3)。
尚、18年の予想EPSを基準にすると予想PERは16倍台まで低下する計算です。時間の経過とともに割高感の解消が期待されるため、株価が大きく下がる可能性も低いと見られます。
(3)については、7月のPMI(購買担当者指数)が、製造業47.9、サービス業45.9と、節目の50を割り込みました。7月に導入された物品サービス税(GST)が要因と見られます。同税の導入は、経済取引の効率化や税務処理負担の軽減によって、中期的に企業業績への恩恵が大きいと期待されます。ただ、導入に伴う混乱もあるとされ、景況には一時的と見られるとは言え、マイナスに作用しているようです。
このため、インドの株式市場はここからさらに高値を更新していくというよりは、短期的には上昇一服となりそうです。もみ合いとなって値固めをする可能性が高そうです。
一方、中期的には政権基盤を強化したモディ首相による経済改革に引き続き期待できるため、値幅調整、または、日柄調整が進む場合には、買いを検討してよいのではないでしょうか。
8/2(水)にはインド準備銀行が政策金利を6%へ0.25%引き下げました。物価の落ち着きを背景に10ヵ月ぶりに利下げに踏み切っています。経済改革の実施がこじれて万が一景気が下振れた場合にも、政策金利の水準が充分高いため、金融政策による下支えが期待できるでしょう。
尚、図表1にご紹介したインド株関連のETFは、それぞれ以下の指数への連動を目指します。
◯ウィズダムツリー インド アーニングスF(EPI)・・・ウィズダムツリー社が算出する、企業業績に基づいて銘柄の組入れ比率をウェイト付けした「ウィズダムツリー インド・アーニングス・インデックス」。
◯ヴァンエック ベクトル インド小型株 ETF(SCIF)・・・インドの小型株が組入れられた「Market Vectors India Small-Cap Index」。
◯DirexionデイリーMSCIインド株ブル3倍ETF(INDL)・・・「MSCIインド株指数」の300%のパフォーマンスへの連動を目指す。
◯iS SP BSE インド(02836)・・・インドの「SENSEX指数」。
◯db x CNXニフティ(03015)・・・インドの代表的な上場企業50社を組入れた「CNX Nifty指数」。
図表2:海外投資家が買い越しから売り越しに転じる
注:インド株式に対する海外投資家のネット売買動向です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3:予想PERは過去の水準と比べてもやや高めに到達
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4:企業景況感の悪化は一時的とみられますが・・・
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成