今回は日本株式に投資するETFです。日本人が「海外上場の日本株ETFに投資すること」にどんな意味があるのか?と思われるかもしれません。意外な効果がありますので、ご紹介いたします。
図表1:日本株式に投資するETF(上場投資信託)
取引 | チャート | コード | 銘柄 |
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DXJ | ウィズダムツリー日本株米ドルヘッジ付(DXJ) | ||
DFJ | ウィズダムツリー日本小型株配当ファンド(DFJ) | ||
DXJS | ウィズダムツリー日本小型株米ヘッジ付(DXJS) | ||
DXJF | ウィズダムツリー日本株金融米ドルヘッジ(DXJF) | ||
EWJ | iシェアーズ MSCI ジャパン ETF(EWJ) |
※SBI証券が作成
当社が取り扱う海外上場ETFには、日本株に投資するものがあります。日本の投資家が「海外上場の日本株ETFに投資すること」にどのような意味があるのか、不思議に思われるかもしれません。
実は、「ドル高・円安と日本株高を両取りできる」という意外な効果を発揮するものがあります。米国の運用会社ウィズダムツリーが提供する「ウィズダムツリー日本株米ドルヘッジ付 ファンド」です。
これは米国上場のドル建てETFで、日本株への投資に際してドルに対するヘッジをかけるというのが特徴です。「今後円安になりそうなため、円安メリットで上昇が期待できる日本株を買いたいが、円の対ドルでの下落は避けたい」という米国の投資家ニーズに応えるものとして開発されました。
これが日本の投資家に対しては、ドルに対して円安が進む局面で、これを主因に日本株が上昇するとき、「ドルの上昇」と「日本株の上昇」の両方を一挙に取れるという結果になります。もちろん、逆にドル安・円高が進んで、これを理由に日本株が下げるときには、市場平均よりも値下がりが大きくなることには注意が必要です。
図表2に、同ETFの円換算価格とTOPIXの推移を比較しています。円安が進む局面では、同ETFのパフォーマンスはTOPIXを上回り、円高が進む局面では、反対にTOPIXを下回っていることが確認できます。
今回このETFを取り上げたのは、(1)ドル高・円安が進む可能性が高く、(2)グローバル市場で日本株の割安感が高まっている、と考えられるためです。
(1)については、このところ米国の経済指標が好悪まちまちで、物価指標も低迷していることからやや円高・ドル安で推移しています。しかし、米国は15年末から政策金利を4回引き上げ、さらに中央銀行のバランスシート縮小に進もうとしています。一方、日銀は金融緩和状態の維持を確認しています。このため、趨勢としてはドル高・円安が進みやすいと考えられます。
また、7/28(金)発表の米国の4-6月期実質GDPは前期比年率2.7%増へ1-3月期の同1.4%増から回復する見通しです。ドルの回復に繋がる可能性に注目できるでしょう。
(2)については、米国のS&P500指数の予想PERは19.1倍に達しているのに対して、日本のTOPIXの予想PERは14.3倍にとどまっています。成長性が高くPERが高水準となる「情報技術」セクターの構成比がS&P500指数では23.0%に対してTOPIXでは11.9%と低いことがPERの水準が低い一因と見られます。しかし、これを考慮しても、日本株は割安感が強いと見られます。
利益のモメンタムについても、TOPIXベースのEPSは17年12月期に前年比38.7%増が予想されています。現在進んでいる決算発表が良好であれば、一気に割安感を解消する動きが出てくる可能性がありそうです。
図表1には、ウィズダムツリーの日本株ドルヘッジ付シリーズのETFから、出来高が多いもの4つをリストアップしています。
一方、「iシェアーズ MSCI ジャパン ETF」には、ヘッジが付いていません。同ETFが注目できる局面は、日本の内需経済が好調で、円高・ドル安が進む中でも日本株の上昇が期待できるとき、と言えるでしょう。
図表2: 「ウィズダムツリー日本株米ドルヘッジ付ファンド」の円建て価格とTOPIXの比較
注:「ウィズダムツリー日本株米ドルヘッジ付ファンド」の価格に同日のドル円レートを掛け合わせて円建てにしたうえ、14年の初週を100として指数化しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成