今回は年初来の資金流入比率(資金流入額÷純資産額)が高い海外上場ETFをご紹介いたします。
図表1:年初来の資金流入比率上位のETF(上場投資信託)
取引 | チャート | コード | 銘柄 |
---|---|---|---|
IEMG | iシェアーズ コア MSCI エマージング ETF(IEMG) | ||
TLT | iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF(TLT) | ||
EMB | iシェアーズ JPM USDエマージング債券 ETF(EMB) | ||
VGK | バンガード FTSE ヨーロッパ ETF(VGK) | ||
LQD | iシェアーズ iBoxx USD投資適格社債 ETF(LQD) |
※SBI証券が作成
当社取扱の海外ETFで純資産が50億ドル以上の主要76銘柄について、年初来の資金流入比率のランキングで、流入上位15銘柄をリストアップしています(図表2)。
資金流入の絶対額でなく、資金流入比率(資金流入額÷純資産額)でランキングすることで、その資産の人気度合がより敏感に反映されると期待されます。上位には新興国株式、新興国債券、米国債券などのランクインが目立っていますが、年初来の米国金利情勢が大きく影響していると見られます。
昨年11月にトランプ大統領が誕生して、米国の10年国債利回りは1.8%近辺から年末にかけて2.6%台まで大幅に上昇しました。一方、年明け以降はトランプ政権の政策実現に対する期待が後退して、米10年国債利回りは低下基調を辿ったことがこれら資産への資金流入が拡大した背景と見られます。
6月下旬にはドラギECB(欧州中央銀行)総裁の発言を受けて欧州の金利が上昇、その波及を受けて米国の長期金利も反発してきました。一方、7/12(水)にはイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長が議会証言でインフレの動向によっては利上げの余地を限定する可能性があると発言したことから、長期金利は上昇一服との見方が広がるなど神経質な動きが続いています。
トランプ政権が税制改革やインフラ投資など経済刺激策に漕ぎ着ける場合には、米国の景気浮揚への期待が高まって長期金利は再び上昇すると考えられるため、これら資産には向かい風になると見込まれます。しかし、トランプ政権が政策実現に手間取っている間は、これら資産クラスへの資金流入は継続しやすいと見られます。
◯iシェアーズ コア MSCI エマージング ETF(IEMG)
「MSCIエマージング・マーケットIMIインデックス」への連動を目指す、新興国株式に投資するETFです。昨年より新興国経済が回復、数々の世界的なリスクイベントを波乱なく通過、市場の米利上げ見通しの下方修正などを受けて資金流入が続いているようです。組入れ上位銘柄は、サムスン電子、テンセントホールディングス、台湾セミコンダクター、アリババグループ、ナスパーズなど新興国を代表する大型テクノロジー株が占めています。
◯iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF(TLT)
「バークレイズ・キャピタル20年超米国国債インデックス」への連動を目指す、米国の長期国債に投資するETFです。一般に、投資する債券の年限が長いほど、金利の変動に対する価格の変動が大きくなります(金利が上昇[低下]すると価格は低下[上昇])。年初来の長期金利の低下をとるには適したETFだったと言えるでしょう。長期金利が上昇する局面では価格下落が大きくなるため、注意が必要です。
◯iシェアーズ JPM USDエマージング債券 ETF(EMB)
「JPモルガンEMBIグローバル・コア指数」へのパフォーマンス連動を目指す、新興国の債券に投資するETFです。米国の景気が浮揚して金利が上昇すると新興国からの資金流出が懸念されます。しかし、今年は新興国経済が回復していることに加え、米国の政策金利の引き上げ見通しが低下してきたことを受けて資金の流入が大きくなっていると見られます。
◯バンガード FTSE ヨーロッパ ETF(VGK)
「FTSE欧州先進国オールキャップ・インデックス」へのパフォーマンス連動を目指す、欧州株式に投資するETFです。昨年夏より欧州の経済指標は改善トレンドが定着、さらに、フランスの大統領選挙の通過など政治の安定が好感されて、欧州資産への資金流入が拡大しています。従来欧州株に投資する際には、ユーロがヘッジされたETFが人気となっていましたが、同ETFは年初来資金流出となっています。現在投資家はドルに対してユーロが上昇すると期待しており、ユーロがヘッジされていないETFが選好されているようです。
◯iシェアーズ iBoxx USD投資適格社債 ETF(LQD)
「マークイットiBoxx米ドル建てリキッド投資適格指数」へのパフォーマンス連動を目指す、米国の社債に投資するETFです。同じ米国の社債ETFでも、「iシェアーズ iBoxx USD Hイールド社債 ETF(HYG)」は年初来資金流出となっていて、クオリティが選好される流れがあると言えるでしょう。
図表2:資金流入比率が高い海外上場ETF(年初来、純資産50億ドル以上)
資産クラス |
銘柄(コード) |
A |
B |
A÷B |
年初来 |
---|---|---|---|---|---|
新興国株式 |
iシェアーズ コア MSCI エマージング ETF(IEMG) |
111 |
329 |
33.8 |
19.9 |
先進国債券 |
シェアーズ 米国国債 20年超 ETF(TLT) |
25 |
78 |
31.9 |
4.6 |
先進国債券 |
バンガード 米国中期社債 ETF(VCIT) |
48 |
152 |
31.6 |
3.5 |
新興国債券 |
iシェアーズ JPM USDエマージング債券 ETF(EMB) |
35 |
117 |
30.1 |
5.4 |
先進国株式 |
バンガード FTSE ヨーロッパ ETF(VGK) |
39 |
162 |
24.3 |
17.5 |
先進国債券 |
iシェアーズ 米国短期国債 ETF(SHV) |
12 |
52 |
23.0 |
0.3 |
先進国債券 |
iシェアーズ iBoxx USD投資適格社債 ETF(LQD) |
81 |
359 |
22.6 |
4.0 |
新興国株式 |
iシェアーズ MSCI ブラジル・キャプ ETF(EWZ) |
12 |
56 |
22.0 |
6.6 |
グローバル債券 |
インターナショナル債券ETF米ドルヘッジ(BNDX) |
16 |
76 |
20.6 |
0.1 |
先進国債券 |
バンガード 米国短期社債 ETF(VCSH) |
39 |
196 |
20.0 |
1.8 |
先進国株式 |
バンガード FTSE先進国市場(除く北米) ETF(VEA) |
100 |
556 |
17.9 |
14.7 |
先進国債券 |
バンガード 米国中期債券 ETF(BIV) |
23 |
138 |
17.0 |
2.7 |
グローバル株式 |
バンガード トータル ワールド ストックETF(VT) |
14 |
85 |
16.1 |
12.0 |
グローバル株式 |
VG トータル Intl ストック(除く米国) ETF(VXUS) |
14 |
86 |
16.0 |
15.1 |
先進国株式 |
iシェアーズ S&P 500 ETF(IVV) |
178 |
1,164 |
15.3 |
9.3 |
※注:当社取扱で純資産50億ドル以上の海外上場ETFを母集団としています。赤字のハイライトは注目銘柄として取り上げたものです。7/11(火)時点のデータによります。
※当社WEBサイト、BloombergデータをもとにSBI証券が作成