中国の本土株市場が当局による監督強化を嫌気して軟調となる中、世界の株式市場への連動性が高い香港株式市場が好調です。6/20(火)に発表予定の、中国A株のMSCI指数への組入れ決定に対する期待が高まっている可能性があり、注目できるでしょう。
図表1 香港株式に投資するETF(上場投資信託)
取引 | コード | 銘柄 |
---|---|---|
2800 | トラッカー ファンド オブ ホンコン | |
2833 | ハンセン指数ETF | |
2828 | ハンセンH株指数ETF | |
2838 | ハンセン FTSEチャイナ50 ETF |
※SBI証券が作成
香港ハンセン指数が年初来16.6%上昇(5/31まで)と好調です(図表2)。
中国本土株の市場を反映する上海総合指数は、金融市場に対する当局の監督強化を嫌気して4月半ば頃に反落、その後も停滞気味です。一方、香港市場は、監督強化の話が出た当初こそ連れ安しましたが、いち早く反発して年初来高値を更新し続ける力強い動きとなっています。
中国の本土株市場は世界市場との連動性が低く、独自要因で動くことが多いのに対して、香港市場は世界市場との連動性が高いことから、世界的な株高の動きが素直に反映されているものと見られます。
また、指数の動きを個別銘柄で分析すると、年初来の指数上昇を牽引したのは、テンセント、AIA、HSBCなどです(図表3)。いずれも内容のしっかりした銘柄と言えるでしょう。
テンセントは、中国のオンラインコミュニティの上位3サービスを独占するインターネット企業で、市場予想を上回る高成長が続いています。保険のAIAは、所得の上昇を背景に保険の普及が構造的に進みつつある点が注目されています。HSBCは、主力とするアジア事業の改善が目立っています。
今後についても香港株式市場は、以下の点から堅調と期待できるでしょう。
【1】中国経済に対する過度の懸念が後退する中で、指数ベースの予想PERが12.6倍と割安感がある。
【2】米国株のPERが高いため、欧州株、日本株、新興国株に分散を図る動きがあるとされ、その一貫で需給が良いと見られる。
当面の注目点は、6/20(火)(日本時間で6/21(水)早朝)に予定されている、中国A株がMSCI新興国指数(※)に組み入れられるかどうかの発表です。今回は組入れを検討する銘柄を現実的なものに絞ったため、組入れとなる可能性が高まったと言われます。組入れが決まれば、香港市場の株式需給にも大きなインパクトがあると期待されます。
※米国のMSCI社が算出・公表している株価指数で、世界の多くの機関投資家がベンチマークとして採用しています。
また、6/14(水)のFOMC(米連邦準備制度理事会)では政策金利の引き上げが見込まれ、米国の利上げは新興国市場からの資金流出に繋がる懸念がありますが、今回は100%近い利上げ予想になっているため、大きな影響はないと考えられます。
尚、図表1に取り上げた香港市場に投資するETFのうち、「トラッカーファンドオブホンコン」と「ハンセン指数ETF」は香港ハンセン指数への連動を目指します。
一方、「ハンセンH株指数ETF」は、H株と呼ばれる中国本土系企業が組入れられた指数(香港企業が含まれない)への連動を目指します。また、「ハンセンFTSEチャイナ50ETF」は、中国の主要企業50社からなる指数への連動を目指します。
図表2 堅調な上昇が続く香港ハンセン指数
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3 香港ハンセン指数の上昇を牽引しているのは、テンセント、AIA、HSBCなど
注:年初来、17年5月30日までの株価騰落率と香港ハンセン指数の上昇に対する寄与度です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成