フランス大統領選挙の結果を受けて欧州株式への資金流入が加速しています。経済状況の改善、株式バリュエーションの低さ、通貨ユーロの上昇の思惑などを背景に同市場への注目が高まっており、先行き良好なパフォーマンスが期待できそうです。
図表1 欧州株式に投資するETF(上場投資信託)
取引 | チャート | コード | 銘柄 |
---|---|---|---|
IEV | iシェアーズ ヨーロッパ ETF | ||
VGK | バンガード FTSE ヨーロッパETF | ||
EWG | iシェアーズ MSCI ドイツ ETF | ||
HEDJ | ウィズダムツリー ヨーロッパ ヘッジド エクイティ ファンド | ||
HEZU | iシェアーズ 米ドルヘッジ MSCI ユーロゾーン ETF |
※SBI証券が作成
5/7(日)のフランス大統領選挙で中道派のマクロン氏の当選が決まって以来、欧州資産への資金流入が加速しています。図表2は、米国に上場する欧州株へ投資するETFのネット資金流入額ですが、5月は24日までで20億ドルを超える流入となっています。
米国の株式市場では、予想PERが18.5倍と高水準になっていることから、相対的に割安感のある欧州株、日本株、新興国株などに投資の分散を図る動きがたびたび報道されていますが、その一貫と考えられます。
また、欧州の経済指標が全般に堅調に推移しており、欧州経済への信頼感が高まりつつあることも最近の資金流入の背景と見られます。特に5/23(火)に発表された5月のドイツIFO企業景況感、マークイット/BMEドイツコンポジットPMI、マークイットユーロ圏コンポジットPMIはそろって良好でした。
欧州株式に注目できるポイントは、4/12掲載の外国株式特集レポート「フランス大統領選挙接近で高まる欧州資産への注目」の(2)で指摘した通り、以下の3点です。
【1】欧州経済は改善基調が定着
【2】新興国経済の改善が追い風
【3】米国に比べて株価評価が低い
詳しくは上記レポートをご参照いただくとして、最近の動きとして【1】については、上記の通り最近の経済指標でもそのような傾向が確認されています。【2】については、中国の金融引き締めによる景気鈍化の影響がやや懸念されるものの、共産党大会を控えて急減速はないだろうというのが大方の見方でしょう。【3】については、最近の株価上昇でストックス欧州600指数の予想PERは16.1倍まで上昇しましたが、米国のS&P500指数の予想PER18.5倍に対して引き続き低水準です。
さらに、通貨ユーロの対ドルレートが図表4の通り、昨年来ユーロの上値を抑えてきた100週移動平均線を明確に上回ってきたことに注目できるでしょう。
ECB(欧州中央銀行)が、その金融政策を現在の極めて緩和的な状態から、正常化に向けて動き出すとの期待が市場で高まっているようです。ECBのドラギ総裁は、市場のそのような期待を抑える方向で発言していますが、他のECB関係者からはタカ派的な発言が目立ち、そろそろ抑えきれなくなっている可能性があるでしょう。
ユーロは一段高となる可能性が燻っていると言えそうです。
尚、図表1にリストアップしたETFのうち、「ウィズダムツリー ヨーロッパ ヘッジド エクイティ ファンド」と「 iシェアーズ 米ドルヘッジ MSCI ユーロゾーン ETF」は、ユーロの対ドルの動きがヘッジされています。
株式の上昇に加えて、ユーロの上昇も取りたい場合には、ユーロがヘッジされていない、これら以外のETFを選ぶ必要がありますので、ご注意ください。
図表2 欧州株のETFに資金流入が加速!
注:米国市場に上場する欧州株に投資するETFで、資産額上位5ファンドの集計によります。17年5月分は5/24(水)までです。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3 欧州株の米国株に対する相対株価は反転の兆し!
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 ユーロの対ドルレートは100週移動平均線を明確に上抜け!
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成