このところ、韓国株式の上昇が目立っています。5/9(火)の大統領選挙に向けて騰勢が強まったため、「思惑だけで上がっているのでは?」と思われるかもしれません。しかし、EPSの上方修正が主因と見られます。今後は、新大統領の文在寅(ムン・ジェイン)氏が北朝鮮との対話路線を打ち出していることも注目できるでしょう。
図表1 韓国株に投資するETF(上場投資信託)
取引 | コード | 銘柄 |
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EWY | iシェアーズ MSCI 韓国キャップト ETF(EWY) | |
02835 | HzKOSPI200(02835) | |
02848 | db x MSCI韓国(02848) | |
069500 | KODEX200ETF (069500) / Samsung KODEX200 ETF |
※SBI証券が作成
韓国株式市場の上昇が目立っています。5/9(火)の大統領選挙に向けて騰勢が強まったため、「思惑だけで上がっているのでは?」と思われるかもしれません。しかし、同市場が上昇した主な要因は、企業業績が改善して予想EPSが上方修正されたことだと見られます。
時価総額が最大でKOSPI指数構成銘柄の約23%を占めるサムスン電子(005930)は、半導体事業の収益改善によって今期予想EPS(コンセンサス予想)が年初から34%上方修正されています。また、時価総額で2位、同構成比で約3%を占めるSKハイニクス(000660)は半導体市況好調の恩恵をフルに享受して、予想EPSが年初から2倍に引き上げられています。
これらの銘柄が牽引して、KOSPI指数の17年12月期予想EPSは年初から12.3%上方修正されています。KOSPI指数の年初来上昇率は12.0%と世界的に見て高い部類に入りますが、EPSの上方修正というファンダメンタルズを伴ったものと言えます(図表2)。
半導体市場については、引き続き好調が見込まれているため、今後も堅調な動きが期待できるでしょう。尚、韓国ウォンは年初来対ドルで6%上昇し、EPSは通貨安を主因に上方修正されてきたわけではないと見られます。これもポジティブな点でしょう。
もちろん、このところ韓国株式市場の上昇が目立った背景には、5/9(火)に行われた大統領選挙に対する思惑もあったと見られます。不人気を極めた朴槿恵(パク・クネ)元大統領からの交代自体がポジティブですが、さらに、当選した文在寅(ムン・ジェイン)大統領から北朝鮮との対話路線が打ち出されていることに注目できるでしょう。
「太陽政策」が奏功して、南北の緊張の緩和、さらに、南北朝鮮統一の可能性の思惑が出てくると、非常に低いことで知られる韓国のPERの水準が変わる可能性に注目できるでしょう。
5/10(水)時点で主要国株式市場の予想PERは、日本のTOPIX指数が14.3倍、米国のS&P500指数が18.5倍、香港のハンセン指数が12.5倍に対して、KOSPI指数は9.9倍です。
韓国株式市場のPERが低い一つの要因は、時価総額の大きい企業にハードウェア系の企業が多く、それらの企業のPERは平均よりも低い傾向があるためです。しかし、根本的な要因は、やはり、北朝鮮と国境を接して敵対していることで有事のリスクが意識され、PERのディスカウントにつながっていると考えられます。
対話がこじれて軍事衝突が発生すれば、このディスカウントされたPERが妥当だったということになるかもしれません。しかし、対話によって穏便に話が進む可能性が出てきたことに注目できるでしょう。第2次世界大戦後に分割されたことで、不幸にも現在のような関係に至っていますが、同じ言語を共有する同じ民族ですので、融和へ向かう可能性もあると考えられます。
韓国株式のPERは諸外国の市場に比べて「恒常的に著しく低い」ということがここ数十年来続いてきましたが、これが変わる可能性に注目できるでしょう。
図表2 韓国のKOSPI指数はEPSの修正に沿って上昇
注:いずれも週足で、最後のデータは5/10(水)です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成