8/11-8/19の香港市場は続落しました。台湾問題をめぐる米中対立の激化懸念や低調な企業業績(見通し含む)が、相場の重石となりました。新型コロナの感染拡大や四川省の電力ひっ迫による企業の稼働停止も、景気減速懸念につながりました。
今回は、電力不足と電力株をご紹介します。
図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
注:8/18(木)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。
図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)
注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(8/18(木)までの騰落率)
ハンセン指数
騰落率上位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
00960 | 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] | 10.2% | -16.5% | -38.0% | 中国不動産大手。中国当局による支援を好感した。中国当局は国有の金融保証保険会社に対し、同社を含む一部の不動産デベロッパーが発行した国内債を保証するよう指示した。 |
00291 | 華潤ビール [チャイナリソーシズビール] | 7.5% | 11.4% | 28.0% | ビール大手。1-6月期の決算内容が市場予想を上回り、買い材料となった。特に平均販売価格が8%上昇し、プレミアムビール強化の戦略が業績向上に貢献したことが評価された。 |
00669 | 創科実業 [テクトロニック・インダストリーズ] | 6.4% | 17.0% | -3.8% | 大手電動工具メーカー。市場予想を上回った決算を発表(8/10)した後、上昇が続いた。8/17は最大顧客であるホームデポ(HD)の決算が市場予想を上回り、買い材料となった。 |
06098 | CG SERVICES | 6.4% | -37.9% | -51.4% | 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。中国当局が国有の金融保証保険会社に対し、同社の親会社を含む一部の不動産デベロッパーが発行した国内債を保証するよう指示した。(SBI証券取り扱いなし) |
06862 | 海底撈(Haidilao) | 5.3% | 3.1% | 18.1% | 火鍋チェーン中国最大手。会社側が1-6月期の売上高は前四半期比で最大17%減になる見通しだと発表。ただし、6月以降は月次ベースで回復していると説明した。1-6月期の業績悪化はおおむね予想の範囲内だったため、月次ベースでの回復が評価された。 |
騰落率下位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
02688 | 新奥能源 [ENNエナジー] | -5.5% | -4.7% | 6.0% | 天然ガス供給会社。天然ガス先物価格の上昇(同社にとって仕入れ価格の上昇につながる)を嫌気したもよう。決算発表(8/19)を前に、大手投資ファンドによる持ち株比率の引き下げがみられた。 |
01177 | 中国生物製薬 [シノ・バイオファーマ] | -6.0% | -15.3% | 2.4% | 大手医薬品メーカー。会社側が1-6月期の純利益は前年同期に比べ78%減少する見通しだと発表し、売り材料となった。 |
01093 | 石薬集団 [CSPCファーマシュ-ティカル] | -6.2% | -4.9% | 2.3% | 医薬品大手。バイオ・医薬品セクターの決算が総じて冴えないなか、大手投資ファンド数社が持ち株比率を引き下げた。 |
00981 | 中芯国際 [SMIC] | -10.6% | -4.5% | 0.0% | 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。4-6月期決算は売上高が前年同期比42%増と堅調だった。ただし経営陣は、半導体業界は不確実性に直面しているとコメント。米半導体大手数社と同様に慎重な見方を示し、売り材料となった。中国国内のテレビが一部の半導体価格は2022年に暴落したと報じたことも、売りを助長した。 |
00316 | 東方海外 | -16.3% | -10.5% | -10.7% | 海上貨物輸送を手掛ける。台湾問題をめぐる米中対立を嫌気した。対立が一段と激化した場合、貨物船の輸送に影響が出ることを警戒した。台湾海峡の海域は東アジアから欧米に貨物を輸送する重要な航路となっている。 |
ハンセンテック指数
騰落率上位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
00700 | 騰訊 [テンセント・ホールディングス] | 3.0% | -6.0% | -14.5% | ゲーム・フィンテック大手。4-6月期決算は売上高が市場予想を下回ったが、調整後純利益は市場予想を上回り、買い材料となった。 |
09961 | 携程旅行網 [トリップドットコム゚] | 0.0% | -1.3% | 18.1% | オンライン旅行サービス大手。夏休み期間中の需要増加が期待されている一方、新型コロナの感染拡大による影響が懸念され、横ばいとなった。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のTCOMとなっています。) |
09999 | 網易 [ネットイース] | -0.3% | 3.4% | -6.9% | ゲーム大手。決算発表(8/18引け後)を前に、売り買いが交錯し、ほぼ横ばいとなった。 |
00285 | 比亜迪電子 [BYDエレクトロニック] | -0.9% | -5.9% | 38.3% | BYD(01211)傘下のスマートフォン部品・受託製造メーカー。アップル関連銘柄。iPhone14シリーズの発表イベントが9/7に開催される予定と報じられた。売り買い交錯で小幅安となった。 |
09866 | 蔚来汽車 [ニオ] | -1.1% | -4.7% | 19.8% | 新興EVメーカー。同業リーオート(LI)の7-9月期の納車台数見通しが市場予想を下回り、連れ安した。ただ、下げ幅は限定的だった。 |
騰落率下位 (5日) |
銘柄名 | 騰落率 (5日) |
騰落率 (1ヵ月) |
騰落率 (3ヵ月) |
関連ニュース等 |
00772 | 閲文集団(China Literature) | -6.1% | -11.6% | -10.9% | オンライン文学プラットフォームを運営。1-6月期の純利益が前年同期比80%近く減少し、売り材料となった。決算発表後、アナリストによる目標株価の引き下げが目立った。 |
09888 | 百度 [バイドゥ] | -6.2% | -9.3% | 5.8% | 検索エンジン大手。中国ADRの上場廃止リスクを警戒した米国上場株(百度ADR(BIDU))の下落に連れ安した。 |
01024 | 快手(Kuaishou Technology) | -6.4% | -12.5% | 1.2% | ショート動画大手。テンセント(00700)が美団(03690)の株式を売却する計画だと報じられ、同社を含むテンセントの保有比率が高い銘柄が売られた。なお、テンセントの経営陣は決算発表会(8/17引け後)で、売却報道を否定した。 |
01347 | 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] | -7.1% | -5.5% | -17.6% | 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。4-6月期決算は売上高が前年同期比79%増と好調だった。経営陣は消費市場の需要(末端需要)は減少しているが、全体的な減少幅はコントロール可能だと説明。他社に比べると若干ポジティブなトーンとなった。ただし、半導体産業の見通し悪化に対する懸念は強く、中国国内のテレビが一部の半導体価格は2022年に暴落したと報じたことも、売りを助長した。 |
00981 | 中芯国際 [SMIC] | -10.6% | -4.5% | 0.0% | 半導体受託生産(ファウンドリ)大手。4-6月期決算は売上高が前年同期比42%増と堅調だった。ただし経営陣は、半導体業界は不確実性に直面しているとコメント。米半導体大手数社と同様に慎重な見方を示し、売り材料となった。中国国内のテレビが一部の半導体価格は2022年に暴落したと報じたことも、売りを助長した。 |
注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。
今週の中国株市況
8/11-8/18の香港市場は、ハンセン指数が1.6%下落、ハンセンテック指数は3.1%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、3.7%下落しました。
台湾問題をめぐる米中対立の激化懸念や低調な企業業績(見通し含む)が、相場の重石となりました。新型コロナの感染拡大や四川省の電力ひっ迫による企業の稼働停止も、景気減速懸念につながりました。
業種別では、ヘルスケア、工業、金融が軟調でした。
ヘルスケアは、業績悪化の見通しを示した中国生物製薬(01177)や四環医薬(00460)が下げを主導しました。医療機器メーカーの微創医療(00853)も、8/5に赤字幅の拡大見通しを発表しましたが、その時よりも8/11-8/18の週に大幅に下落しました。業績悪化は個別企業にとどまらず、セクター全体に及ぶものだと警戒され、ヘルスケア全般でポジション縮小の動きがみられました。軟調地合いを受け、好決算を発表したバイオ医薬品開発受託大手の薬明生物技術(02269)も売り買いが交錯し、ほぼ横ばいとなりました。
工業は、主に海運株の下落によるものです。台湾問題をめぐる米中対立を嫌気しました。対立が一段と激化した場合、貨物船の輸送に影響が出る可能性があると、警戒されました。台湾海峡の海域は東アジアから欧米に貨物を輸送する重要な航路となっているためです。海運大手のコスコシッピング(01919)や海上貨物輸送を手掛ける東方海外(00316)が売られました。物流大手の京東物流(02618)も連れ安しました。
金融は、中国の保険株と英大手銀行のHSBC(00005)やSt.Chartered(02888)が調整しました。中国保険大手のチャイナライフ(02628)は、8/12に米国市場からの自主的な上場廃止を申請すると発表した後、売り優勢でした。ピンアン保険(02318)も連れ安しました。HSBCとSt.Chartered(チャータード銀行)は、ともに香港での住宅ローン優遇金利の引き上げを発表し、売り材料となりました。
一方、電気通信や公益は逆行高となりました。投資家のリスク回避志向が高まるなか、ディフェンシブ銘柄が買われました。1-6月期の決算発表で増配を発表したチャイナモバイル(00941)や、配当性向を引き上げたチャイナテレコム(00728)が堅調でした。
今回のトピックス
今回は、電力不足と電力株をご紹介します。
日経新聞でも報じられたように、中国の四川省は計画停電を実施しており、重慶市や浙江省などにも電力制限の動きが広がっています。猛暑が続くなか、電力需要の急増に対して供給が追い付かないことが背景です。水力発電に大きく依存している四川省の場合は、干ばつによる水不足も電力供給に悪影響を与えました。
中国の電力不足は、脱炭素という大きなトレンドの中で起きる一時的な供給不足によるものが多く、特に夏の猛暑時に発生しやすいです。昨年の夏から秋にかけても、中国では電力不足が深刻でした。当時は猛暑に加え、新型コロナからの脱却による景気回復(電力需要の急拡大)で、電力ひっ迫が起こりました。
足元の電力不足の状況を確認してみると、昨年ほどの規模にはなっておらず、その深刻度も今のところ昨年より低いようです。一方、猛暑が続いていることからすると、電力不足もしばらく続く可能性があります。昨年同様、チャイナパワー(02380)や華潤電力(00836)、ファネンパワー(00902)などの電力株は電力不足の恩恵を受けそうです。
ただ、電力不足が長続きし、より深刻化した場合、中国当局が供給策強化に打ち出す可能性があります。昨年の動向からすると、中国当局が一連の対策を講じた際は利益確定売りを誘発しました。電力株の株価動向は、電力不足の状況に加えて、中国当局の動きにも留意する必要がありそうです。
図表4 主要電力株の株価推移(2021年6月末=100として指数化)
※BloombergをもとにSBI証券が作成。