ブラジルのインフレ圧力は低下傾向を続けている。同国のインフレ指標にはIPCAという拡大消費者物価指数を用いるのだが、同指標は2011年9月の前年比7.3%増をピークとして、現在は同6.2%増と4ヶ月連続で伸びが鈍化している。主にレアル高による財価格の下落が効いているのだろう。これまでの発言等を勘案すると、ルセフ大統領は物価抑制より景気に重きをおいていることから、今後も金融緩和策を継続する見通しだ。
目先では7日の金融政策委員会における利下げの有無が焦点になるが、これは前述の通り、利下げを決定するとみている。政策金利は10.5%から50bpsの引き下げを行い、10%ちょうどにするだろう。前回(1月17・18日)の会合では50bpsの利下げを決定したが、その際の議事録において「政策金利は一桁まで引き下げられる可能性が高い」と新たに書き加えられており、今月仮に予想通り利下げが決定されたとしても、今回が利下げの打ち止めとなる可能性は低く、年内には9%台まで政策金利は引き下げられ、その後中央銀行は様子見のスタンスを取ると予想する。
図1:ブラジルのインフレ率、政策金利、対ドル相場の推移
ブラジルの足元の景気動向に関して言えば、しっかりと持ち直してきているという感想を持っている。四半期ごとに発表されるGDPを予測する際に用いている経済指標に経済活動指数という指標があるが、同指標は2011年11月は前月比1.3%、12月は同0.6%と2ヶ月連続で上昇しており、前年比でみても2011年10月から上昇は加速している。また、労働市場においても、同国の失業率は歴史的に低い状況にあり、良好な同国市場の状態を物語っているが、見方を変えれば賃金の上昇圧力が将来的なインフレ圧力に繋がっていくことも懸念される。現に最低賃金は年間で10%以上も伸びている。しかし、このような雇用環境の改善が消費にも繋がっており、同国政府が行った利下げによる金利負担の低下や、昨年12月に行った白物家電などへの減税が追い風となり、同国の実質小売売上高指数なども良好な結果を残している。
ブラジルといえば、株よりも為替や債券が日本の投資家には人気があるが、同国の資本規制に関しては引き続き注意が必要だ。3月1日に同国政府は資本取引規制の強化を発表している。足元ではレアルが対ドルで再び上昇しているため、今後も利下げだけでなく、資本規制や金融取引税(IOF)の引き上げ等を行っていく可能性が高い。要人の発言を見てみると、マンデガ財務相は先進国の金融緩和によってレアルが不当に高くなっていると指摘しており、ルセフ大統領も先進国の金融緩和を背景とするレアル高が同国の輸出産業に与える悪影響を懸念する発言をしている。特に、マンデガ財務相は「1ドル=1.7レアルを下回るレアル高は同国経済にとって悪である」と具体的に数字を出しており、我々にとっては1つの判断すべき材料となるのではないだろうか。
図2:ブラジルの労働、生産、消費関連の指標推移
労働市場は歴史的に良好な状態。
その結果として、賃金の上昇圧力が懸念材料に。