10月2日、オーストラリア準備銀行(RBA)は政策金利であるオフィシャルキャッシュレートを25bp引き下げ、同月3日より3.25%にすると発表した。政策金利の引き下げは今年の6月以来4ヶ月ぶりとなる。昨年11月の利下げ以降、累計で150bp(4.75%→3.25%)引き下げたことになる。
先月のレポートで同国の金融政策について、「同国中銀が中国経済の減速に対する危機感を背景に、金融緩和に対する姿勢を現状維持から追加緩和方向にややウェイトを戻しているという認識は必要」と指摘したが、ちょうどタイミングよく政策金利の引き下げを発表した。同国通貨の動向に関心を抱く投資家には有益な情報を提供できたのではないかと考えている。
政策金利の発表時にRBAのウェブサイトに公開される声明文を読んでみると、前述の通り、中国経済の減速に対する危機意識は読み取れるが、中国に限らず世界全体の減速感に関する懸念を読み取ることが出来る。
では、次回の政策金利はどのようになるのか。前回と同様に同国中銀の声明文から考えていくことにする。まず、世界経済や中国経済という外部環境については引き続き弱気で見ているだけでなく、不透明感が強まったとしている。
一方で、国内環境に関しては、好材料と悪材料をそれぞれ挙げている。好材料として、欧州では国や企業の資金調達環境が厳しいものの、同国ではそのような状況は見受けられないこと。居住用住宅への投資には明るい兆しが見えていること。炭素税導入の影響はあるものの、目先2年程度はインフレ率が目標の範囲内に収まると予測されること、などを挙げている。
悪材料としては、商業用不動産への投資は依然として弱いこと。同国通貨が予測している水準より高い位置にあること。労働市場・雇用環境に関するデータが弱いこと。2013年に予想される資源関連の投資規模が当初の想定より小さくなると予測できること、などを挙げている。
以上のことをふまえると、次回も政策金利を引き下げるかどうかは、外部環境の急激な変化が起こるかどうかに左右されるのではないか。同国の政策金利が過去最低水準の3.00%に近づくなか、他国に比べて景況感に比較的余裕があるにも関わらず、金融政策の幅を自ら狭めていくとは考えにくい。
自国通貨の水準が想定よりは高いという観点からすれば、政策金利を下げていくことは理解できるが、それによってもたらされるメリット/デメリットを考慮すると、外部環境の変化に関わらず、立て続けに政策金利の引き下げに動くとは考えにくく、今後については外部環境をより注視するスタンスが求められるだろう。