9月4日、オーストラリア準備銀行(RBA)は政策金利であるオフィシャルキャッシュレートを3.50%に据え置くと発表した。政策金利の据え置きはこれで3会合連続となる。昨年11月から始まった同国の利下げサイクルで合計125bps(4.75%→3.50%)金利が引き下げられたことになるが、ここ最近の経済指標を勘案するとインフレも落ち着いており、景気もそこまで落ち込んでいないとの判断から、数ヶ月は金融政策に動きは見られなかった。
実際に同国中銀の声明文などにも大きな変更はなく、今後も現状維持を基本とした金融政策には変わりないだろう。しかし、最大の輸出国である中国の景気動向には注意すべきであり、動向しだいでは追加緩和シナリオも考慮すべきである、というのが本稿タイトルの趣意である。
金融政策に直接的な影響を与えうる消費者物価指数に目を向けると、4〜6月期は前年比1.2%増と同国中銀が目標とする同2.0〜3.0%というレンジを大きく下回っている。7月から導入された炭素税が物価上昇要因になるとの指摘も見受けられるが、それほど大きな影響にはならないと考えており、当面は物価上昇圧力による金融政策の変化は想定していない。
図1:オーストラリアの消費者物価指数と政策金利の推移
同国通貨の見通しを立てる上で、基本的には次の3点を前提としたい。1つ目は同国の金利水準が先進国の中では依然として高い水準にあること。2つ目は最上位格付けであるということ。3つ目は同国が資源国であるということである。以上3点を考えると基本的には前向きな見通しを立てて問題はないと考える。
しかし、前述のように中国経済が想定以上に減速するシナリオが現実のものになると、同国通貨にも大きなネガティブインパクトを与えかねない。
また、対円で見れば円が相対的に強含んでいることから、同国通貨に対してもここ数年のレンジ内での動きにとどまるとの見方がメインシナリオになるが、対米ドルを考えると、米国でQE3(量的緩和第3弾)が行われるかどうかによって、立てるべきシナリオは現状から変更の必要があると考える。
いずれにせよ、同国通貨に関する投資をする場合は中国経済の動向にも十分に注意する必要がある。私個人としては中国経済の減速は年初から予測しており、直近発表されている経済指標や各業界の数字からは、むしろ同国経済の持ち直しの兆しすら感じ取れる数字もあったと考えていることから、最悪のシナリオは免れる方向で見通しを立てている。ただし、同国中銀が中国経済の減速に対する危機感を背景に、金融緩和に対する姿勢を現状維持から追加緩和方向にややウェイトを戻しているという認識は必要であり、目先は追加緩和に伴う弱含み局面があるかもしれないと注意する必要はあろう。