先週は企業決算が集計ベースで市場予想を上回って堅調で、事前に市場の目線が下がっていたこともあり、強いポジティブな反応となりました。今週はGAFAMの決算発表、年末商戦の見通し、S&P500指数の株価動向、などが注目されます。
今回は先週発表の好決算銘柄から、テスラ(TSLA)、ネットフリックス(NFLX)、ジョンソン & ジョンソン(JNJ)、ロバート ハーフ インターナショナル(RHI)、SVBファイナンシャル グループ(SIVB)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
不動産 | 3.2% | 1.9% | 3.9% |
ヘルスケア | 2.9% | 0.0% | 1.4% |
金融 | 2.8% | 9.3% | 12.2% |
公益事業 | 2.3% | 2.5% | 3.6% |
資本財・サービス | 1.8% | 5.6% | 1.6% |
S&P500指数 | 1.6% | 3.4% | 4.1% |
情報技術 | 1.6% | 2.5% | 3.5% |
一般消費財・サービス | 1.5% | 4.8% | 4.2% |
エネルギー | 1.2% | 18.6% | 19.2% |
素材 | 0.9% | 5.9% | 4.5% |
生活必需品 | 0.8% | 1.3% | 1.7% |
コミュニケーション・サービス | -0.6% | -1.5% | 0.3% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
テスラ | 7.9% |
アボットラボラトリーズ | 7.9% |
コストコホールセール | 6.5% |
アメリカン・エキスプレス | 6.4% |
ネットフリックス | 5.8% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
IBM | -11.6% |
ペイパル・ホールディングス | -10.4% |
インテル | -9.2% |
バイオジェン | -5.8% |
ブッキング・ホールディングス | -5.7% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
テスラやネットフリックスなど注目度が高い銘柄の決算が良好な内容となり、また、S&P500指数採用銘柄の集計ベースでも市場予想を上回ったことを受けて10/21(木)まで7日続伸となり、S&P500指数は最高値更新まで進みました。
週初の中国経済指標が冴えない内容となり、また、米10年国債利回りが上昇を続けるなど株価の抑制要因もありましたが、7-9月期決算に対する市場の目線が下がっていたことや、次週のGAFAMの好決算に対する期待から、足もとの決算への反応がポジティブな方向に振れていたと考えられます。
一方、10/22(金)は前日引け後に発表された動画・写真共有アプリのスナップの7-9月期売上が市場予想を下回り、その要因がアップルのプライバシー規約変更の影響であったため、フェイスブックやツイッターに波及して、コミュニケーションサービスを中心に下げました。インテルの10-12月期EPS見通しが市場予想を下回ったことも足をひっぱりました。
S&P500指数は週間で1.6%、NYダウは1.1%、ナスダック指数は0.8%の上昇でした。
業種指数では、アボットラボラトリーズの好決算を受けて「ヘルスケア」が上昇したほか、長期金利の上昇が恩恵となる「金融」、通常は長期金利の上昇が売り要因になる配当利回りが高い「不動産」「公益事業」も上位となっています。一方、コミュニケーションサービスはスナップの決算が影響しました。個別銘柄では、好決算を受けてテスラ(TSLA)がトップとなり、上場来高値を更新しています。
経済指標では、9月中古住宅販売件数が前月比7%増となり、5月に底入れして回復基調にあることが確認されました。一方、9月の住宅着工件数は前月比1.6%減、住宅建設許可件数は同7.7%減と低調でした。
中国の7-9月期実質GDPは前年比4.9%増と、新型コロナへの対応も影響して4-6月期の同7.9%増から大幅に低下しました。9月の鉱工業生産は前年比3.1%増と前月の同5.3%増から低下して電力不足の影響がみられる一方、小売売上高は前年比4.4%増と前月の同2.5%増から回復、新型コロナへの対応が一服した可能性がありそうです。
また、原油のWTI価格に影響する「クッシング原油在庫」が10/15(金)分は2週連続で低下、順調に増加していた「ベーカーヒューズのオイルリグカウント」(米国のシェールオイルの生産状況を示す指標)が10/22(金)分は前週比減少となっています。原油価格の押し上げ要因になっているとみられます。
今週の米国株式市場
GAFAMの決算発表、年末商戦の見通し、S&P500指数の株価動向、などが注目されます。
今週はGAFAM(アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾンドットコム、マイクロソフト)が揃って7-9月期決算を発表します(図表3)。S&P500指数の採用銘柄の利益合計では、最も比重が大きい週になります。
7-9月期決算の先週までの集計では、S&P500指数採用銘柄のEPS(発表済み企業の実績と未発表企業の予想の混合)は、前年同期比32.7%増となっています(FactSet社の集計、10/22時点)。6月末時点の予想は同27.5%増でしたので5.2%ポイントの上方修正です。S&P500指数の予想EPSの上方修正は9月に止まりましたが、再び上向きの基調を取り戻せそうです。今週は年末までにどこまで上方修正となるか占ううえで非常に重要な週です。
米国で年末商戦の見通しが話題になる時期です。家計の純資産が大幅に積みあがっているため個人消費の環境は非常に良いと考えられるうえ、新型コロナの感染一服でリベンジ消費で盛り上がる可能性もありそうです。
一方、全米小売業協会が10/21(木)に発表した「ホリデースペンディング」の見通しは997.73ドルで、2020年に続いて2019年の1,047.83ドルをやや下回る見通しとなっています。消費者信頼感が8月から大きく低下している影響が考慮されているのかもしれません。また、サプライチェーン問題で品切れになる可能性が意識され、購買が前倒しとなって商戦の序盤が非常に好調に見える可能性にも留意する必要があるでしょう。
S&P500指数は、10/21(木)に史上最高値を更新しましたが、小幅にとどまりました。9/2(木)の高値4,545.85ポイントに対して、10/21(木)高値は4,551.44ポイントと5ポイントの更新です。さらに、10/22(金)は株価の転換を示すことが多い「十字線」が出ており、チャートは若干嫌な形となっています。「一文新値は鬼より怖い」と言われますので、上昇基調が続くためには、今週中に9月の高値を明確に上回っていくことが必要でしょう。
経済指標では、10/26(火)に米国の9月新築住宅販売件数(前月比2.7%増の予想)、10月コンファレンスボード消費者信頼感(前年の109.3から110に改善の予想)、10/27(水)に米国の9月耐久財受注(前月比0.5%減の予想)、10/28(木)に米国の7-9月期実質GDP(前期比年率3.0%増の予想)、10/29(金)にユーロ圏の7-9月期実質GDP(前年比3.5%増の予想)、などの発表が予定されています。
企業イベントでは、GAFAMのほか、3M、ビザ、AMD、ツイッター、コカ・コーラ、マクドナルド、ボーイング、ゼネラルモーターズ、メルク、マスターカード、スターバックス、アルトリアグループ、エクソンモービルなどの決算発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は先週の好決算銘柄から、テスラ(TSLA)、ネットフリックス(NFLX)、ジョンソン & ジョンソン(JNJ)、ロバート ハーフ インターナショナル(RHI)、SVBファイナンシャル グループ(SIVB)を選んでご紹介いたします。
図表3 GAFAMの7-9月期決算見通し
銘柄 | 決算発表 予定日 |
7-9月期 売上高 前年同期比 (%) |
7-9月期 EPS 前年同期比 (%) |
4-6月期 売上高 前年同期比 (%) |
4-6月期 EPS 前年同期比 (%) |
フェイスブック A(FB) | 25日(月) | 37.2 | 32.3 | 55.6 | 100.6 |
アルファベット A(GOOGL) | 26日(火) | 37.7 | 63.5 | 61.2 | 188.6 |
マイクロソフト(MSFT) | 26日(火) | 18.2 | 13.8 | 21.4 | 48.6 |
アップル(AAPL) | 28日(木) | 30.9 | 69.5 | 36.4 | 101.6 |
アマゾン ドットコム(AMZN) | 28日(木) | 16.3 | -27.3 | 27.2 | 46.8 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (10/22) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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テスラ(TSLA) | 909.68ドル | 114.9 | 【自動車事業の粗利率が市場予想を上回った】 ・自動車事業の粗利益率が温室効果ガスの排出権(クレジット)取引による利益を除いたベースで28.8%となり、市場予想の26.4%を上回ったことが評価されています。今後の売上拡大に影響の大きいテキサスとベルリンに建設中の新工場では、引き続き年内の生産開始を見込んでいるとしました。10/22(金)終値は909.68ドルと、アナリスト目標株価平均の735.92ドルを上回っていますが、主力銘柄の中で4-6月期に続いて業績修正のモメンタムが強い銘柄となる見込みで、注目できるでしょう。 ・7-9月期決算は自動車販売台数の増加によって売上が前年同期比57%増、EPSは同2.4倍と伸びました。自動車の販売単価は普及タイプの「モデル3」の比率増加によって同6%の低下となりました。売上は市場予想をやや下回ったものの、粗利率が予想を上回ったことでEPSは市場予想を11%上回りました。 | ||
ネットフリックス(NFLX) | 664.78ドル | 50.1 | 【グローバル展開のポテンシャルが再認識される可能性】 ・7-9月期は4-6月期に154万人と低調だった新規加入者数は438万人(市場予想は350万人増)と回復したことがポジティブでした。さらに、9/17(金)に配信を開始した韓国ドラマの「イカゲーム」が4週間で1億4,200万世帯で視聴され、同社史上最大のヒットとなって世界的に注目を集めています。事業を展開する重要市場で現地でのコンテンツ制作に出資する、同社独自の取り組みの成果と言え、グローバルに展開する動画配信サービスの新たな潜在力を評価する動きがでてくる可能性があります。 ・7-9月期決算は、売上が前年同期比16%増で、EPSが同83%増でした。売上は市場予想並み、EPSは市場予想を25%上回りました。10-12月期の新規加入者数は850万人のガイダンスです。新型コロナの影響で上半期のコンテンツ制作は低調となりましたが、下半期は順調なリリースになるとコメントしています。 | ||
ジョンソン & ジョンソン(JNJ) | 163.72ドル | 15.8 | 【主力医薬品が堅調に伸びる】 ・主力医薬品の販売増加による7-9月期の業績堅調を受けて、通期の調整後EPSガイダンスを従来比で2.6%引き上げています。多発性骨髄腫治療薬「Darzalex」、乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「Stelara」、乾癬「Tremfya」などの販売が伸びています。 ・7-9月期決算は、売上が前年同期比11%増、EPSが同18%増で、売上は市場予想を下回ったものの、EPSは市場予想を10%上回りました。部門別の売上は、医薬品部門が同14%増、医療機器部門が同8%増、消費者部門が同5%増、地域別売上は、米国が同8%増、海外が同14%増でした。 | ||
ロバート ハーフ インターナショナル(RHI) | 112.63ドル | 19.8 | 【人材紹介サービスの需要が拡大している】 ・専門職に特化した世界最大の人材紹介・派遣会社です。企業景況感が大きく改善して半年以上が経過して、昨年は守りを重視した企業が「攻め」に転じていると考えられます。企業が売上拡大を目指すときには人への投資も重要と考えられ、人材紹介サービスへの需要が高まると期待されます。労働を供給する側からも、パンデミックが一段落したことで新たな仕事を探す動きが活発化しているとされます。 ・7-9月期決算は、パンデミックの影響を受けた前年同期に対して売上が前年同期比44%増、EPSが同2.3倍に改善しました。売上は2019年7-9月期比で10%増まで回復し、2021年4-6月期比でも8%増と好調でした。部門別の売上は、テンポラリー&コンサルタントスタッフィングが同35%増、企業コンサルティングのProtivitiが同56%増、パーマネントプレースメントスタッフィングが同79%増です。 | ||
SVBファイナンシャル グループ(SIVB) | 753.12ドル | 26.3 | 【シリコンバレーの銀行】 ・米国の銀行・金融サービス持株会社。主要子会社シリコン・バレー・バンクを通じて、プライベートおよびコマーシャルバンキングサービスを提供、また、投資顧問、資産管理、個人財産管理、仲介サービスのほか、資産運用サービスも手掛けます。本社はカリフォルニア州サンタクララ。テクノロジー企業のIPOが活発化すると、シリコンバレーのスタートアップ企業への投融資が多い同社は評価が高まる傾向があります。 ・7-9月期決算は、収入が前年同期比42%増、EPSは同26%減で、市場予想に対してそれぞれ14%、12%上回りました。EPSの減少は、7月初に完了した富裕層向けに資産運用サービスを提供するBoston Privateの買収関連費用が影響しています。収益の基調を示す非GAAPのコア・フィー・インカムは、同40%増でした。2021年12月期の平均貸出額は前年比40%台半ば、純金利収入も同40%台半ば、2022年12月期はそれぞれ同20%台半ば、同30%台半ばの伸びと高成長の持続が想定されています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2022年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
25(月) | ・ドイツIFO景気指数(10月) ・米シカゴ連銀全米活動指数(9月) |
フェイスブック |
26(火) | ・S&Pコアロジック住宅価格指数(8月) ・米新築住宅販売件数(9月) ・コンファレンスボード消費者信頼感(10月) |
マイクロソフト、アルファベット、3M、ビザ、AMD ツイッター、アーチャーダニエルズミッドランド テキサスインスツルメンツ、エンフェーズエナジー |
27(水) | ・中国工業部門利益(9月) ・米耐久財受注(9月) |
コカ・コーラ、マクドナルド、ボーイング、サービスナウ ゼネラルモーターズ、アラインテクノロジー、ガーミン |
28(木) | ・日銀金融政策 ・ユーロ圏景況感(10月) ・ECB政策金利 ・米新規失業保険申請件数(10月23日に終わる週) ・米実質GDP(7-9月期、速報値) ・米中古住宅販売成約(9月) |
アップル、アマゾンドットコム、メルク、マスターカード スターバックス、ユナイテッドレンタルズ、ザイリンクス |
29(金) | ・日本鉱工業生産(9月) ・ユーロ圏消費者物価指数(10月) ・ユーロ圏実質GDP(7-9月期、速報値) ・米個人所得・個人支出(9月) ・米個人消費支出物価指数(9月) ・米ミシガン大学消費者マインド(10月、確報値) |
アルトリアグループ、エクソンモービル、アッヴィ、シェブロン |
31(日) | ・中国製造業・非製造業PMI(10月) | |
11月 1(月) |
・財新中国製造業PMI(10月) ・米建設支出(9月) ・米ISM製造業景気指数(10月) |
|
2(火) | ・米自動車販売台数(10月) | ファイザー、コノコフィリップス、アカマイテクノロジーズ AMCエンターテインメント(E)、マーチンマリエッタマテリアルズ |
3(水) | ・米ADP雇用統計(10月) ・米ISM非製造業景気指数(10月) ・米製造業受注(9月) ・FOMC政策金利 |
クアルコム、Tモバイル、トリンブル、アルベマール ブッキングホールディングス |
4(木) | ・米新規失業保険申請件数(10月30日に終わる週) ・ユーロ圏小売売上高(9月) |
スクエア、モデルナ、イルミナ、フォーティネット |
5(金) | ・米雇用統計(10月) ・米消費者信用残高(9月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成