先週は様子見によるもみ合いが続いたのち、週末発表の5月雇用統計を受けて米10年国債利回りが低下したことから、株式は上昇して終わりました。今週はS&P500指数の高値更新なるか、インフレ懸念の行方(5月消費者物価指数)、G7サミット、などが注目されます。
今回は米国の証券アナリストが強気に見ている銘柄を、EPS修正、、BUY比率、目標株価乖離でスクリーニングして抽出しました。ここから、アマゾン ドットコム(AMZN)、ペイパル ホールディングス(PYPL)、セールスフォース ドットコム(CRM)、ゼネラル モーターズ(GM)、コノコフィリップス(COP)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 6.8% | 2.8% | 4.9% |
不動産 | 3.7% | 5.1% | 21.4% |
情報技術 | 1.5% | 0.6% | 8.5% |
金融 | 1.2% | 1.7% | 14.2% |
生活必需品 | 1.0% | 1.1% | 10.8% |
公益事業 | 0.7% | -1.4% | 9.6% |
S&P500 | 0.7% | -0.1% | 10.1% |
素材 | 0.4% | -0.2% | 16.7% |
コミュニケーションサービス | 0.2% | 0.4% | 8.9% |
資本財・サービス | 0.1% | -0.2% | 12.7% |
ヘルスケア | -0.9% | -1.6% | 8.0% |
一般消費財・サービス | -1.2% | -3.7% | 8.6% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
シュルンベルジェ | 16.2% |
エヌビディア | 13.5% |
コノコフィリップス | 7.8% |
フォード・モーター | 7.3% |
バイオジェン | 7.0% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
アボットラボラトリーズ | -5.5% |
ダナハー | -5.1% |
テスラ | -5.0% |
サーモフィッシャーサイエンティフィック | -5.0% |
フェデックス | -4.3% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
6/1(火)は強いISM製造業景気指数を受けて最高値近くまで上昇する場面があったものの、週後半の雇用関連指標発表を控えて様子見姿勢が強まり、6/2(水)も小動きに終始しました。
6/3(木)には、5月のADP雇用統計が前月比97.8万人増と市場予想を上回り、米10年国債利回りが反発して1.6%台を回復しました。また、バイデン大統領が共和党議員との交渉の中で、法人税率の引き上げ(21%→28%)を取り下げ、15%の最低法人税率の導入を提案したと報じられ、実効税率が低いテクノロジー株が売られました。S&P500が0.4%の下落に対してナスダック指数は1.0%下落しました。
一方、6/4(金)の5月雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比59.9万人増となり、前月の27.8万人増から改善して労働力の供給不足によるインフレ懸念を緩和する一方、強すぎない数字でプチ「ゴールディロックス」を演出しました。米10年国債利回りが1.557%まで低下、前日と打って変わってテクノロジー株が買われました。S&P500指数は週間で0.6%の上昇でした。
業種指数では、WTI価格が原油需要見通しの上方修正を受けて年初来高値を更新、「エネルギー」の上昇が大きくなりました。2位の「不動産」は長期金利の低下とともに、経済再開で不動産需要の回復を織り込む動きがあることも影響しているとみられます。ディフェンシブの「ヘルスケア」が引き続き弱く、「一般消費財・サービス」はテスラが足を引っ張りました。
個別銘柄では、原油価格の上昇を受けて石油サービスのシュルンベルジェ(SLB)がトップで、好決算が好感されたエヌビディア(NVDA)が引き続き買われました。一方、アボットラボラトリーズ(ABT)は、新型コロナ向け検査機器の需要が当初の想定を下回るとして下落、同様の事業を営む銘柄にも株価下落が波及しました。
経済指標では、米国の5月ISM製造業景気指数が前月の60.7から61.2、ISM非製造業景気指数が前月の62.7から64.0へ、いずれも予想を上回る改善となりました。
今週の米国株式市場
S&P500指数の高値更新なるか、インフレ懸念の行方(5月消費者物価指数)、G7サミット、などが注目されます。
S&P500指数の高値は5/7(金)の4,238.04ポイントで、6/4(金)終値の4,229.89ポイントはあと0.2%まで迫っています。高値を更新した場合でも、相場格言に「一文新値は鬼より怖い」と言いますので、十分なマージンをもって更新できるか注目です。
5月の米消費者物価指数は前年比4.7%増で、4月の同4.2%増から拡大の見通しです。市場のインフレ懸念に対するインパクトがあるか注目です。
6/11(金)から開催のG7サミットは、米国がバイデン大統領の就任によって国際政治にカムバックしてから最初の会合となります。トランプ大統領は国際的な協力を軽視したことから、G7サミットの重要性は大幅に低下しましたが、今後は重要性が増すと期待されます。
環境問題や中国対応などが主要な議題となる見込みです。6/5(土)に閉幕したG7財務相会合では、「最低法人税率15%」で合意するなど、インパクトのある成果が見られています。
経済指標では、6/7(月)に中国の5月貿易統計(輸出は前年比32.1%増、輸入は同53.5%増の予想)、6/10(木)に米国の5月消費者物価指数(前月比0.4%増、前年比4.7%増の予想)、6/11(金)に6月のミシガン大学消費者マインド速報値(前月の82.9〜84.2に改善の予想)、などの発表が予定されています。
企業イベントでは、アップルの世界開発者会議が6/7(月)から6/11(金)までオンラインで開催されます。iPhone、iPad、Apple Watchの新機能やMacのOSに関する発表が見込まれます。
今週の5銘柄
今回はアナリストによる業績予想の推移や投資判断の集計値から、米国の証券アナリストが最も強気にみている銘柄群を探ってみました。
具体的には、S&P100指数採用銘柄について、(1)過去3ヵ月のEPS修正率が3%以上、(2)アナリスト投資判断のBUY比率(※)が80%以上、(3)アナリストの目標株価平均値と現在値の乖離率が10%以上の条件を満たすものを抽出のうえ、目標株価との乖離率が大きい順に並べました(図表3)。
※BUY比率は、アナリストによる投資判断付与総数に対するBUY判断の比率です。
ここから最近の市場環境なども考慮の上、アマゾン ドットコム(AMZN)、ペイパル ホールディングス(PYPL)、セールスフォース ドットコム(CRM)、ゼネラル モーターズ(GM)、コノコフィリップス(COP)を選んでご紹介いたします。
図表3 アナリストが強気見通しである銘柄のスクリーニング(S&P100指数採用銘柄が対象)
銘柄名 | コード | EPS修正率 (3ヵ月) (%) |
BUY比率 (%) |
目標株価 乖離率 (%) |
株価 (6/3) (ドル) |
予想PER (倍) |
アマゾン・ドット・コム | AMZN | 11.5 | 100.0 | 33.3 | 3,187.01 | 46.8 |
ペイパル・ホールディングス | PYPL | 3.8 | 89.8 | 22.1 | 257.79 | 54.5 |
ナイキ | NKE | 3.5 | 81.3 | 21.5 | 134.17 | 42.8 |
セールスフォース・ドットコム | CRM | 11.0 | 80.0 | 20.6 | 230.84 | 60.3 |
マイクロソフト | MSFT | 4.3 | 95.3 | 20.2 | 245.71 | 31.8 |
アルファベット | GOOGL | 22.7 | 97.8 | 19.7 | 2,347.58 | 24.1 |
ダナハー | DHR | 17.3 | 87.0 | 19.6 | 241.01 | 27.1 |
ロウズ | LOW | 13.7 | 82.4 | 18.7 | 190.30 | 17.3 |
フェイスブック | FB | 13.2 | 84.7 | 17.8 | 326.04 | 22.7 |
アドビ | ADBE | 5.4 | 81.5 | 15.6 | 493.14 | 41.5 |
コノコフィリップス | COP | 65.2 | 92.9 | 14.6 | 59.47 | 17.6 |
コムキャスト | CMCSA | 3.4 | 82.4 | 13.4 | 56.39 | 19.3 |
ゼネラル・モーターズ(GM) | GM | 4.1 | 90.9 | 10.5 | 63.46 | 11.8 |
注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (6/4) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
アマゾン ドットコム(AMZN) | 3206.22ドル | 47.1 | 【「GAFAM」の中で中期利益成長が最も高いと評価】 ・同社の予想PERは「GAFAM」の中で突出して高いものの、今後3年間のEPS成長も最も高く、2023年12月期には118.43ドルに達すると予想されています。米日独英など先進国のネット通販でトップのポジションを確保して成長余地があり、世界トップのクラウド事業の成長性も高いことが背景と考えられます。動画ストリーミングではネットフリックス、ディズニー+、HBO Maxの3強には届かないものの、MGMの買収で巻き返しを図ります。 ・1-3月期決算は、売上が前年同期比44%増、EPSが同3.2倍と好調でした。巣ごもりでネット通販の需要が強い状態が続き、北米、海外ともネット通販の収益性が大きく改善しました。アマゾンウェブサービスの売上は前年同期比32%増でした。4-6月期の売上ガイダンスはアマゾンプライムデーの開催を前提に前年同期比24〜30%増の予想です。 | ||
ペイパル ホールディングス(PYPL) | 263.04ドル | 55.6 | 【eコマースおよび電子決済の普及から恩恵】 ・eコマースの電子決済でリーダーの地位を確保していることから、eコマースおよび電子決済の普及により恩恵を受ける企業として注目されます。2月11日に開催されたインベスター・デーでは、アクティブアカウント数を2020年末の377百万から2025年に750百万に引き上げる目標を表明しています。また、新型コロナが終息すると消費者はネット通販から実店舗に戻ると想定されますが、これに向けて実店舗で利用できる「デジタル・ウォレット」を強化しています。 ・1-3月期決算は売上が前年同期比31%増、調整後EPSが同85%増、決済総額が同46%増、新規アクティブアカウント数が14.5百万件と好調でした。これを受けて2021年12月期の決済総額の伸びを前年比約30%増とし、調整後EPSの見通しを前年比21%増の4.7ドル前後に引き上げています。 | ||
セールスフォース ドットコム(CRM) | 237.48ドル | 62.0 | 【景気回復の恩恵が期待される】 ・ 企業向けに販売支援(顧客関係管理)、顧客サービス支援、マーケティング支援などのソフトウェアをクラウドで提供する企業です。顧客関係管理ソフトウェアでは世界最大で、2位企業に売上で5倍以上の大差を付けています。企業のクラウド採用拡大を受けて高成長が続いていますが、保留中のスラック買収が実現すれば、マイクロソフト、SAP、オラクルなどに対するシェア拡大が加速すると期待されます。 ・5/27(木)に発表した2-4月期決算は、売上が前年同期比22%増、調整後EPSが同73%増と好調で、2022年1月期の売上ガイダンスを260億ドルへ2.5億ドル引き上げました。CEOは、「26年度に500億ドルの売上に到達するパスにある」と自信を示しました。景気の回復とともに企業のIT投資が回復すると見込まれ、同社は恩恵を受けると期待されます。 | ||
ゼネラル モーターズ(GM) | 63.37ドル | 11.6 | 【大型のSUVとピックアップトラックの販売が好調】 ・フォードと並んで米国最大級、世界5位の自動車メーカーで、キャデラック、シボレー、ビュイック、GMCブランドの中・大型車、SUV、トラックを展開します。2035年までにすべての乗用車モデルをEVにするとして、大手自動車メーカーの中でEVに対する積極姿勢が注目されています。25年までに270億ドルを投じて全世界で30モデルのEVを投入する計画です。5/27(木)には半導体不足でここ数ヵ月操業を停止していた5工場の生産を再開するとして安心感が広がりました。 ・1-3月期は売上が前年同期比1%減にとどまったものの、利益率が高い大型のSUV、ピックアップトラックの販売好調で、調整後EBITは前年同期の12億ドルから44億ドルへ大幅に改善しました。通年の調整後EPSは4.50〜5.25ドルを維持しました。半導体不足の影響は出るものの、会社は通期のガイダンスには高い自信があるとしました。 | ||
コノコフィリップス(COP) | 59.85ドル | 17.4 | 【株主還元の拡大に期待】 ・石油・天然ガスの探鉱・生産の上流部門に特化するエネルギー企業の大手です。原油価格が安い局面でパーミアン盆地で操業するコンチョ・リソーシズの買収を決めて2021年1月に完了、原油価格回復の恩恵を大きく受けています。カナダのオイルサンド資産を保有するエノバス・エナジー社の保有株式を2022年にかけて売却する方針で、株主還元の拡大が期待されています。 ・1-3月期決算は、原油価格回復に買収効果が加わり、売上が前年同期比60%増、調整後EPSが同53%増と大幅に伸びました。リビアを除く生産量は前年同期比16%増相当の1日当たり石油換算バレルで149万に増加、4-6月期も同150〜154万に拡大する見通しです。年率15億ドルペースでの自社株買いの再開を発表しています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、セールスフォースドットコムが2022年1月期、その他は2021年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
7(月) | ・中国貿易統計(5月) ・米消費者信用残高(4月) |
・アップルの世界開発者会議(11日まで) |
8(火) | ・日本実質GDP(1-3月期、確報値) ・ユーロ圏実質GDP(1-3が月、確報値) ・ドイツZEW景気指数(6月) ・米3年国債入札 ・米NFIB中小企業楽観指数(6月) ・米求人労働異動調査(4月) |
|
9(水) | ・日本工作機械受注(5月、速報値) ・中国生産者・消費者物価指数(5月) ・中国資金調達総額(5月、15日までに発表) ・米10年国債入札 |
|
10(木) | ・ECB主要政策金利 ・米30年国債入札 ・米消費者物価指数(5月) ・米新規失業保険申請件数(6月5日に終わる週) ・米家計純資産変化(1-3月期) |
|
11(金) | ・主要7ヵ国(G7)首脳会議(英国、13日まで) ・米ミシガン大学消費者マインド(6月、速報値) |
|
14(月) | ・ユーロ圏鉱工業生産(4月) | |
15(火) | ・米20年国債入札 ・米小売売上高(5月) ・米生産者物価指数(5月) ・米鉱工業生産(5月) ・米NAHB住宅市場指数(6月) |
オラクル |
16(水) | ・日本機械受注(4月) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(5月) ・中国調査失業率(5月) ・米住宅着工・建設許可件数(5月) ・米FOMC政策金利 |
レナー |
17(木) | ・中国新築住宅価格(5月) ・EU27ヵ国新車登録台数(5月) ・ユーロ圏消費者物価指数(5月) ・米新規失業保険申請件数(6月12日に終わる週) ・米フィラデルフィア連銀景気指数(6月) |
アドビ |
18(金) | ・日銀金融政策 ・イラン大統領選挙 |
カーニバル(E) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成