先週はモデルナのワクチン開発進展のニュースで週初に上昇、その後はCOVID-19の感染拡大、行動制限の広がりを受けて週末にかけて軟調となりました。今週はCOVID-19の感染状況と行動制限の広がり、ワクチン開発に関する続報、追加経済対策の交渉、ホワイトハウスの権限移譲、などが注目されます。
先週取り上げた景気敏感株を維持して、ゼネラル モーターズ(GM)、ボーイング(BA)、キャタピラー(CAT)、ダウ(DOW)、ハネウェル インターナショナル(HON)を今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 5.6% | 24.4% | 6.2% |
資本財・サービス | 0.2% | 8.3% | 15.3% |
金融 | 0.2% | 9.5% | 13.9% |
素材 | -0.1% | 6.5% | 13.5% |
一般消費財・サービス | -0.3% | 0.3% | 3.2% |
S&P500 | -1.4% | 3.2% | 5.3% |
通信サービス | -1.5% | 3.3% | 5.5% |
情報技術 | -1.9% | 1.2% | 1.8% |
生活必需品 | -2.2% | 1.7% | 3.8% |
不動産 | -2.4% | 3.2% | 2.5% |
ヘルスケア | -3.1% | 0.5% | 1.6% |
公益事業 | -4.9% | -2.3% | 7.1% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
オキシデンタル・ペトロリアム | 24.1% |
コノコフィリップス | 12.2% |
サイモン・プロパティー・グループ | 8.2% |
シュルンベルジェ | 7.8% |
ターゲット | 7.5% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | -13.9% |
CVSヘルス | -9.1% |
サーモフィッシャーサイエンティフィック | -7.3% |
アムジェン | -6.1% |
ユナイテッドヘルス・グループ | -6.1% |
注:11/23(月)終値による騰落率です。個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
16日(月)にモデルナのCOVID-19ワクチンの有効率が94.5%と発表されたことを受けてS&P500指数は1.2%上昇、終値ベースでも最高値を更新しました。一方、その後はCOVID-19新規感染者数の急増とニューヨーク州などでの行動制限の再導入が嫌気されて週末にかけて軟調となりました。
19日(木)には追加経済対策の協議再開が好感される場面がありましたが、流れを変えるには至りませんでした。経済指標でも、米国の10月小売売上高が市場予想を下回り、新規失業保険申請件数が前週から増加となったことも相場にネガティブに作用しました。S&P500指数は週間で0.8%の下落でした。
業種指数(23日(月)終値ベース)では、市場平均以上に景気敏感業種、平均以下にディフェンシブ業種が固まっており、景気敏感業種の優位が鮮明です。S&P500指数が下落する中でも景気敏感業種が買われていることは物色の変化がトレンドになりつつあると言えそうです。
個別銘柄では、ドラッグストアを運営するウォルグリーン ブーツ アライアンス(WBA)とCVSヘルス(CVS)が騰落率下位に入っています。アマゾン ドットコム(AMZN)が処方薬を取り扱うデジタル薬局「アマゾン・ファーマシー」の営業を開始したことが嫌気されています。
経済指標では、米国の10月小売売上高が前月比0.3%増と市場予想の同0.5%増を下回ってヘッドラインはややネガティブに作用しました。ただ、前年比では5.7%増と9月の同5.9%増から低下したものの水準としては十分堅調で、さほどの懸念は必要ないでしょう。また、11/14(土)に終わる週の新規失業保険申請件数が74.2万人と前週の71.1万人を上回ったことも相場に警戒感を与えたようです。ただ、4週移動平均では前週の75.5万人から74.2万人に低下基調となっています。
今週の米国株式市場
今週はCOVID-19の感染状況と行動制限の広がり、ワクチン開発に関する続報、追加経済対策の交渉、ホワイトハウスの権限移譲、などが注目されます。なお、11/26(木)は感謝祭で休場、11/27(金)は現地時間午後1時までの短縮取引となります。
11/23(月)はマークイットの米企業景況感が製造業、非製造業とも予想外に前月から改善となったこと、アストラゼネカが開発中のCOVID-19ワクチンについて有効率が70〜90%としたことが好感されて、景気敏感株が主導して上昇しました。バイデン次期大統領が財務長官にイエレン前FRB議長を起用するとしたことも材料視された可能性があるようです。
米国のCOVID-19新規感染者数は11/20(金)に19万人を超えて過去最多を更新するなど、15万人を超える水準で推移し、各地で行動制限の導入が広がっています。有効なワクチン開発が確実となれば、足もとの新規感染者数増加が相場に与える影響は低下していくと考えられますが、急増の局面にあるため当面は注視する必要があるでしょう。
ワクチン開発については、米食品医薬品局(FDA)の使用許可がいつ下りるか、いつ頃から接種が始まるか、普及のペースはどうか、などが焦点となりそうです。ファイザーが11/20(金)にCOVID-19ワクチンとしては初となる緊急使用許可をFDAに申請しており、FDAは12/10(木)に会合を開いて承認を協議する予定です。早ければ12/11(金)にも接種が始まる可能性があります。
株式市場はワクチン開発の進展とCOVID-19新規感染者数増加の綱引きとなっていますが、11/23(月)に金価格がここ2ヵ月のレンジ下限を下抜けていることに注目すべきでしょう(図表3)。「金」は世の中のマクロ的なリスクにフォーカスして取引されるため、これはワクチン開発のほうを重視すべきと示唆しているのではないでしょうか。
ホワイトハウスの権限移譲は、追加経済対策の協議、ワクチンの流通準備などにも影響するため、トランプ大統領がどこまで抵抗を続けるか注視していく必要があるでしょう。バイデン次期大統領の就任は来年1/20(水)と期限は区切られているため、遅れても大幅な相場下落にはつながらないと考えられます。ただ、なるべく早く次期政権が動き出すに越したことはないでしょう。
経済指標では、11/24(火)に米国のコンファレンスボード消費者信頼感(前月の100.9から98.0に低下の予想)、11/25(水)に米国の7-9月期実質GDP改定値(速報値と同じ前期比年率33.1%増の予想)、10月耐久財受注(前月比1.0%増の予想)、10月新築住宅販売件数(前月比1.2%増の予想)、などの発表が予定されています。
企業決算では、アナログデバイセズ、ベストバイ、ダラーツリー、HP、ディアなどの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今週は先週取り上げた景気敏感株の、ゼネラル モーターズ(GM)、ボーイング(BA)、キャタピラー(CAT)、ダウ(DOW)、ハネウェル インターナショナル(HON)を維持して今週の5銘柄といたします。
これら5銘柄の11/13(金)〜11/20(金)の株価騰落率は図表4の通り、いずれもプラスで平均をとると3.4%の上昇とS&P500指数の0.8%下落を大幅に上回っています。
さらに、S&P500指数が高値を付けた11/16(月)を起点にCOVID-19の新規感染者拡大で軟調となった11/20(金)にかけても株価が上昇となったのはゼネラルモーターズとダウで、特にモメンタムが強く注目できるでしょう。
図表3 金価格のチャート(現物、日足)
※当社WEBサイトを通じでSBI証券が作成
図表4 「今週の5銘柄」のパフォーマンス
銘柄(コード) | 11/13(金) 終値 (ドル) |
11/20(金) 終値 (ドル) |
株価騰落率 (%) |
ゼネラル モーターズ(GM) | 41.19 | 43.04 | 4.5 |
ボーイング(BA) | 187.11 | 199.62 | 6.7 |
キャタピラー(CAT) | 171.71 | 172.23 | 0.3 |
ダウ(DOW) | 51.97 | 54.73 | 5.3 |
ハネウェル インターナショナル(HON) | 201.54 | 202.00 | 0.2 |
S&P500指数 | 3,585.15 | 3,557.54 | -0.8 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (11/23) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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ゼネラル モーターズ(GM) | 44.77ドル | 7.9 | 【独自開発のEVバッテリー「アルティウム」を擁する】 ・米国最大、世界4位の自動車メーカーで、キャデラック、シボレー、ビュイック、GMCブランドの中・大型車、SUV、トラックを展開します。自動運転では、16年に買収したクルーズ社を核に開発を行っています。20年10月に公開したピックアップトラック「GMC ハマー EV」は21年後半から生産見通しです。 ・注目点は、独自開発のパウチ型セルによるEVバッテリー「アルティウム」を擁することです。パウチ型セルは車両のデザインに応じてレイアウトできる柔軟さがあることから、EV車のプラットフォームとなり得るため、2020年以降上記のすべてのブランドでEV車を発売していく計画です。ホンダとの提携では「アルティウム」を採用する次世代EVの共同開発を行っています。7-9月期の売上は、米中での自動車販売の回復を受けて前年同期比トントンまで改善しています。 | ||
ボーイング(BA) | 211.53ドル | 120.9 | 【737MAXの飛行停止措置が解除】 ・2回の墜落事故を受けて19年3月から飛行停止措置が続いていた同社の主力機種「737MAX」について、先週FAA(米連邦航空局)が飛行再開を承認しました。COVID-19のパンデミックによる航空需要の回復にはまだ遠いものの、「737MAX」の飛行停止解除は経営の正常化に向けて重要な前進と考えられます。中長期での航空機需要の拡大、世界市場をエアバスと2分する市場構造による利益成長のポテンシャルに対する信頼は維持されているとみられます。 ・7-9月期は民間航空機部門の売上が前年同期比56%減となって全体も同29%減となり、調整後の営業赤字は7.5億ドル、調整後EPSは1.39ドルの赤字でした。COVID-19のパンデミックによる航空需要の低迷は長期化する見通しとして、4月に発表した1.6万人に加えて新たに1.4万人の人員削減を発表しました。営業キャッシュフローは48億ドルの赤字であるのに対して、期末のキャッシュは271億ドルと、当面の経営には問題のない水準が確保されています。 | ||
キャタピラー(CAT) | 174.78ドル | 23.2 | 【7-9月期に売上の底入れが予想されている】 ・資源開発、建設業者向けの油圧ショベル、ブルドーザーなどが柱の重機メーカーです。資源開発向けの出荷は、2012年のピークから65%の減少となっており、更新需要を考慮すると複数年にわたる売上回復が期待されます。今回の成長局面では、機械のネット接続や監視に関連したサービスによって利益率を改善することが期待されています。 ・7-9月期の売上は前年同期比22%減、ディーラーの在庫圧縮の影響もあった4-6月期の同31%減からは改善しました。資源開発、建設向けとも同20%台前半の落ち込みで、調整後EPSは同50%減でした。四半期売上は7-9月期に底入れして、今後は前四半期との比較で緩やかな増加になると予想されています。株価は11/12(木)に上場来高値を更新しています。 | ||
ダウ(DOW) | 55.94ドル | 20.6 | 【景気敏感の代表的企業として物色】 ・19年4月にダウ・デュポンからスピンオフした化学素材メーカーです。スピンオフ以来、事業の透明性が増し、コスト削減への踏み込みが強まって、株式市場からの信頼性が増しているとみられます。また、天然ガスを主な原料としていることで原油を原料とする同業他社に対してコスト競争力が高く、景気回復時には業績の伸びが相対的に高くなると期待されます。 ・7-9月期決算は、売上が前年同期比10%減と4-6月期の同24%減から改善、調整後EPSも4-6月期の0.26ドルの赤字から0.50ドルの黒字に転換しています。製品価格の下落が前年同期比9%となる一方、販売数量は前年同期比1%減にとどめ、4-6月期との比較では9%増加、家具、機器、パッケージ、建設、自動車など向けの需要回復がけん引したとしています。 | ||
ハネウェル インターナショナル(HON) | 204.58ドル | 25.9 | 【9月からNYダウに採用された資本財の会社】 ・航空機エンジン、交通システム、ビルシステム、機能材料・テクノロジーなどの資本財企業です。売上の24%を占める民間航空機向けの事業では厳しい状況が続いています。しかし、需要先が幅広い産業に分散していること、業務執行の対応力が高いこと、150億ドル近い現金を擁する強固なバランスシートにより、他の資本財企業に比べてグローバルリセッションをうまく乗り切れるポジションにあると考えられます。 ・デジタル分野にフォーカスした投資とボルトオン型買収(補完的な買収)によって、ソフトウェアで価値を生み出す資本財企業を目指しています。7-9月期の売上は航空機部門が前年同期比25%減と足をひっぱって全体では同14%減ですが、10-12月期は同14〜11%減と緩やかに改善の見通しです。9月からユナイテッドテクノロジーと合併したレイセオンに替えてNYダウに採用されています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。コンセンサス予想EPSの決算期は、いずれも21年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
24(火) | ・ドイツIFO企業景況感(11月) ・S&Pコアロジック住宅価格(9月) ・コンファレンスボード消費者信頼感(11月) |
アナログデバイセズ、ベストバイ、ダラーツリー、HP |
25(水) | ・米実質GDP(7-9月期、改定値) ・新規失業保険申請件数(11月21日に終わる週) ・米耐久財受注(10月) ・米個人所得・個人支出(10月) ・米PCEコアデフレータ(10月) ・ミシガン大学消費者マインド(11月、確報値) ・米新築住宅販売件数(10月) ・FOMC議事要旨(11月4日、5日開催分) |
ディア |
26(木) | ・米国市場休場(感謝祭) | |
27(金) | ・米国市場短縮取引(ブラックフライデー) ・米国市場短縮取引 ・中国工業部門利益(10月) ・ユーロ圏景況感(11月) |
|
30(月) | ・日本鉱工業生産(10月) ・中国製造業・非製造業PMI(11月) ・米中古住宅販売成約(10月) |
ズームビデオコミュニケーションズ |
12月 1(火) |
・財新中国製造業PMI(11月) ・OECD経済見通し ・ユーロ圏消費者物価指数(11月) ・米自動車販売台数(11月、2日までに発表) ・米ISM製造業景気指数(11月) |
セールスフォースドットコム |
2(水) | ・ユーロ圏生産者物価指数(10月) ・ユーロ圏失業率(10月) ・ADP雇用統計(11月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
クラウドストライクホールディングス、オクタ |
3(木) | ・ユーロ圏小売売上高(10月) ・米新規失業保険申請件数(11月28日に終わる週) ・米ISM非製造業景気指数(11月) |
ドキュサイン、ダラーゼネラル |
4(金) | ・米雇用統計(11月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成