先週はCOVID-19の感染拡大に対応する追加景気刺激策への期待が高まったことに加え、米中の企業景況感、米国の雇用統計が改善したことから、大幅な反発となりました。今週はCOVID-19の感染者数の推移と経済活動再開の停止がどこまで広がるか、COVID-19の感染第2波に対応して追加の景気刺激策が浮上するか、また、米中関係の行方などが注目されます。
今回は業績推移が堅調かつアナリストの目標株価平均への乖離が大きい銘柄から、CVSヘルス(CVS)、ロッキード マーチン(LMT)、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMY)、ユナイテッドヘルス グループ(UNH)、プロクター & ギャンブル(PG)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
素材 | 4.0% | -0.7% | 35.2% |
公益事業 | 3.8% | -5.4% | 11.9% |
不動産 | 3.7% | -1.9% | 21.6% |
ヘルスケア | 2.9% | -0.5% | 17.2% |
一般消費財・サービス | 2.8% | 3.9% | 42.6% |
資本財・サービス | 2.3% | -3.1% | 22.5% |
情報技術 | 1.6% | 5.8% | 36.6% |
S&P500 | 1.5% | 0.2% | 25.8% |
生活必需品 | 1.1% | -1.2% | 6.2% |
通信サービス | 0.9% | 0.1% | 27.8% |
エネルギー | -1.4% | -9.6% | 23.6% |
金融 | -2.8% | -7.0% | 17.1% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
フェデックス | 14.2% |
アムジェン | 9.8% |
ファイザー | 6.8% |
サイモン・プロパティー・グループ | 6.0% |
エクセロン | 5.8% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
キャピタル・ワン・ファイナンシャル | -8.8% |
ウェルズ・ファーゴ | -7.4% |
バンク・オブ・アメリカ | -5.8% |
USバンコープ | -5.7% |
JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー | -5.4% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。1週は6/25(木)終値から7/2(木)終値の比較です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
29日(月)、30日(火)は米中の景気指標の改善に加え、COVID-19の感染拡大に対応する追加景気刺激策への期待が高まり大幅な反発となりました。7月1日(水)はギリアドサイエンシズのワクチン臨床試験に関する報道がさらに相場を押し上げ、2日(木)には市場予想を大幅に上回る米国の雇用増で続伸となりました。S&P500指数は週間で4.0%の大幅上昇です。
業種指数では、全体的な傾向ははっきりしませんが、「素材」がトップとなっているのは、景気刺激策への期待が背景にあるとみられます。FRB(米連邦準備制度理事会)によるストレステストで「少なくとも7-9月期まで増配や自社株買いを禁止された」大手銀行を含む「金融」が下落しています。
個別銘柄では、3-5月期決算が宅配需要の拡大により市場予想を上回ったフェデックス(FDX)、主力薬のリウマチ治療薬「エンブレル」に関して競合するバイオシミラー(バイオ医薬品の後発薬)に販売阻止の判決が出たアムジェン(AMGN)、COVID-19向けワクチンの第1相臨床試験で好結果を報告したファイザー(PFE)が上昇しています。
経済指標では、米国の6月雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比480万人増と市場予想の同300万人増を大幅に上回る改善となりました。企業景況感では、米国の6月ISM製造業景気指数が52.6と前月の49.5から改善して50を超え、中国の6月製造業PMI、非製造業PMIとも前月から改善して50以上の水準が保たれました。
今週の米国株式市場
今週はCOVID-19の感染者数の推移と経済活動再開の停止がどこまで広がるか、COVID-19の感染第2波に対応して追加の景気刺激策が浮上するか、また、米中関係の行方などが注目されます。
先週の米国株式市場はCOVID-19の新規感染者が急増しているにもかかわらず上昇となりましたが、経済活動再開の停止が広がって7-9月期のGDP見通しも下方修正される中、上値を追うのは難しそうです。一方、FRBによる未曾有の金融緩和が下値を支えているとみられ、引き続きもみ合いが続きそうです。
米国のCOVID-19新規感染者数は、7/4(土)までの7日平均で4万5千人台と、6/27(土)の同3万3千人台から急増、6月下旬からの感染ペース加速が続いています(図表3)。カリフォルニア、テキサス、フロリダでの感染拡大が主因ですが、ニューヨークの経済活動再開スケジュールに変更を迫るなど影響が広がっています。また、世界の新規感染者数も18万人に達し、終息の兆しが見えていないことも懸念されます。
景気刺激策については、先週民主党主導で下院で可決したインフラ法案は共和党が過半を占める上院では審議されない見通しです。一方、政府・共和党から対案が出てくるか注目です。
米中関係については、香港の国家安全維持法で対立する一方、米中貿易合意の履行は順調と報道されています。ただし、8月下旬の開催で調整が進むG7サミットでは、議長国の米国が「中国問題を話し合いたい」とするなど刺激的な話も出ており、引き続き注意が必要でしょう。
経済指標では、7/6(月)に米国の6月ISM非製造業景気指数(前月の45.4から50.0へ改善の予想)などの発表が予定されています。
企業決算では、ウォルグリーンブーツアライアンス、デルタ航空などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
先週はナスダック指数が再び最高値を更新するなど、IT関連銘柄への物色が活発でした。一方、「ウィズコロナ銘柄」の筆頭とも言える、アマゾンドットコムの7/2(木)終値は2,890.30ドルでアナリストの目標株価平均2,809.30ドルを3%上回り、ネットフリックスもアナリストの目標株価平均451.33ドルに対して6%上回るなど、目先の上昇余地は限られてきているとみられます。
このような認識のもと、今回は業績が比較的堅調で、かつ、アナリスト目標株価が現値を上回っている銘柄をS&P100指数採用銘柄を対象にスクリーニングで抽出してご紹介いたします。
【スクリーニング条件】
(1)予想EPSの修正率が過去4週、3ヵ月ともマイナス1%以上
(2)今期・来期ともEPSが増加予想
(3)アナリストの目標株価平均が7/2(木)終値を5%以上上回る
図表4に抽出された銘柄からCVSヘルス(CVS)、ロッキード マーチン(LMT)、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMY)、ユナイテッドヘルス グループ(UNH)、プロクター & ギャンブル(PG)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表3 米国と世界のCOVID-19新規感染者数(7日移動平均)
※WHOデータをもとにSBI証券が作成
図表4 業績堅調でアナリストの目標株価平均までの乖離が大きい銘柄(S&P100指数採用銘柄)
コード | 銘柄 | 目標株価 乖離率 (%) |
EPS 修正率 (4週間) (%) |
EPS 修正率 (3ヵ月) (%) |
今期予想 増益率 (%) |
来期予想 増益率 (%) |
CVS | CVSヘルス | 22.7 | 0.0 | 0.1 | 0.0 | 5.6 |
LMT | ロッキード・マーチン | 18.6 | 0.0 | -0.1 | 10.0 | 9.3 |
SO | サザン | 15.6 | -0.1 | -0.2 | 1.0 | 5.3 |
BMY | ブリストル・マイヤーズ スクイブ | 13.2 | 0.1 | 2.2 | 32.3 | 20.0 |
DUK | デューク・エナジー | 13.0 | 0.2 | -0.4 | 1.8 | 5.8 |
UNH | ユナイテッドヘルス・グループ | 11.2 | 0.1 | 0.4 | 7.3 | 13.6 |
ABBV | アッヴィ | 7.9 | 0.3 | 7.8 | 15.6 | 11.9 |
PG |
プロテクター・アンド・ギャンブル(P&G) |
6.8 | -0.1 | -0.2 | 9.4 | 5.4 |
CSCO | シスコシステムズ | 6.0 | 0.0 | 3.3 | 1.3 | 0.4 |
GOOGL | アルファベット | 5.0 | -0.9 | 0.0 | 16.2 | 26.5 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/2) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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CVSヘルス(CVS) | 64.70ドル | 9.1 | 【COVID-19の影響下でも業績堅調の見通し】 ・米国最大のドラッグストアチェーンです。18年11月に医療保険大手のエトナを買収し、19年12月の売上構成は、医療サービスが48%、リテールおよびLTC(オムニケア)が29%、医療保険が23%を占めます。 ・1-3月期決算は、売上が前年同期比8%増、調整後EPSが同18%増と堅調でした。COVID-19は各事業にプラスとマイナスの要因がありますが、全体として大きな影響がない見通しで、通期のEPSガイダンスは7.07〜7.14ドルで維持されました。1-3月期の調整後EPS1.91ドルには、薬の処方が前倒しされたことで0.10ドルのプラスに寄与したとしています。 | ||
ロッキード マーチン(LMT) | 362.00ドル | 15.0 | 【F-35ステルス戦闘機がけん引】 ・軍事用航空機・宇宙関連機器の大手メーカーです。19年の売上構成比は、航空機部門(F-35、F-16などの戦闘機)が40%、ロータリー・ミッションシステム部門(ヘリコプターなど)が25%、宇宙システム部門が18%、ミサイル・火器制御部門が17%です。米国政府を中心に約30ヵ国と取引があり、海外売上は28%を占めます。 ・売上の25〜30%を占めるF-35ステルス戦闘機が米国防費で重点調達品としてあげられており、業績拡大をけん引します。また、海外からの需要も地政学的リスクの増大を背景に好調です。COVID-19の影響はサプライチェーンの問題として生じる可能性はあるものの、業績の基調を損なうものではないと考えられます。1-3月期決算は、売上が前年同期比9%増、EPSが同2%増と堅調です。 | ||
ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMY) | 59.14ドル | 9.5 | 【21年に20%増益のガイダンス】 ・バイオ医薬品大手で、19年11月に同業のセルジーンを買収しています。20年の調整後EPSは6.00〜6.20ドルに対して21年は同20%増に相当する7.15〜7.45ドルとしています。がん免疫治療薬の「オプジーボ」と「ヤーボイ」の併用療法が肺がんへの適応拡大の可能性があることなどが背景とみられます。市場全般に業績見通しが不透明な中、注目できるでしょう。 ・1-3月期決算は、売上が前年同期比82%増ですが、セルジーンの買収効果を除いたオーガニックベースでも同13%増、COVID-19の影響による処方前倒しの影響を除いても同8%増と好調でした。主力薬のうち「オプジーボ」は前年同期比2%減となったものの、抗凝固薬「エリキュース」が同37%と売上をけん引しています。 | ||
ユナイテッドヘルス グループ(UNH) | 298.26ドル | 18.4 | 【医療保険最大手、通期ガイダンスを維持】 ・医療保険の最大手です。企業・政府機関・個人向けに各種医療保険・サービスを提供するユナイテッドヘルスと薬剤給付管理など医療情報サービスを提供するオプタムの2本柱です。1-3月期の決算発表では、通期のEPSガイダンスが前年比12〜14%増に相当する16.25〜16.55ドルで維持され、安心感が広がりました。 ・1-3月期決算、売上が前年同期比7%増、営業利益が同3%増でした。ユナイテッドヘルスケア事業は売上が4%増、営業利益は同2%減にとどまりましたが、オプタム事業は新規顧客の獲得などにより売上が同25%増、営業利益が同12%増と好調でした。 | ||
プロクター & ギャンブル(PG) | 120.88ドル | 23.2 | 【ディフェンシブ性に加え、シェア拡大が注目される】 ・日用品の世界大手で、オーガニック成長(為替や事業買収・売却の影響を除いた成長)が緩やかながらも改善基調にあり、また、これが幅広い部門にわたる数量面の改善に支えられていることが注目されます。 ・20年1-3?期のオーガニック売上成?率は前年同期?6%増と市場予想の同4.8%増を上回りました。部門別には、ファブリック&ホームケア、ヘルスケア、ベビーケア&ファミリーがそれぞれ10%、9%、8%のオーガニック売上成?でけん引しました。COVID-19による需要の高まりも反映されています。一?、20年6?期はドル高を考慮して売上?通しを前年?4〜5%増から同3〜4%増に引き下げました。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。プロクター&ギャンブルは21年6月期、その他は20年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
6(月) | ・ユーロ圏小売売上高(5月) ・米ISM非製造業景気指数(6月) |
|
7(火) | ・米求人労働異動調査(5月) | |
8(水) | ・米消費者信用残高(5月) | |
9(木) | ・中国生産者・消費者物価指数(6月) ・日本工作機械受注(6月) ・米新規失業保険申請件数(7月4日に終わる週) |
ウォルグリーンブーツアライアンス |
10(金) | ・中国資金調達総額(6月) ・米生産者物価指数(6月) |
デルタ航空(E) |
13(月) | ペプシコ | |
14(火) | ・中国貿易統計(6月) ・ユーロ圏鉱工業生産(5月) ・ドイツZEW景気指数(7月) ・米NFIB中小企業楽観指数(6月) ・米消費者物価指数(6月) |
ウェルズファーゴ、シティグループ、JPモルガンチェース |
15(水) | ・日銀金融政策 ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(7月) ・米鉱工業生産(6月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
ユナイテッドヘルスグループ、ゴールドマンサックス ASMLホールディングス |
16(木) | ・中国実質GDP(4-6月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(6月) ・中国調査失業率(6月) ・ECB主要政策金利 ・EU27ヵ国新車登録台数(6月) ・米小売売上高(6月) ・フィラデルフィア連銀景気指数(7月) ・新規失業保険申請件数(7月11日に終わる週) ・米NAHB住宅市場指数(7月) |
ジョンソン&ジョンソン、ネットフリックス(E)、バンクオブアメリカ |
17(金) | ・米住宅着工・建設許可件数(6月) ・ミシガン大学消費者マインド(7月) |
マイクロソフト(E)、ブラックロック、ニューコア(E) モルガンスタンレー(E) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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