先週は企業景況感など景気指標の改善に加え、中国による景気対策への期待が高まって急反発、最高値を更新しました。今週は新型コロナウイルスの動向を見守るほか、ニューハンプシャー州予備選挙、パウエルFRB議長の議会証言、米国小売売上高などが注目されます。
10-12月期決算が好調な銘柄として、エスティーローダー(EL)、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン ドットコム(AMZN)、インテル(INTC)、ロッキード マーチン(LMT)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 4.5% | 5.5% | 15.8% |
素材 | 4.2% | 0.9% | 0.0% |
ヘルスケア | 3.9% | 0.1% | 9.0% |
通信サービス | 3.3% | 1.2% | 7.8% |
S&P500 | 3.2% | 1.9% | 7.6% |
金融 | 3.1% | 0.6% | 3.6% |
資本財・サービス | 3.1% | 1.0% | 2.4% |
一般消費財・サービス | 2.4% | 2.2% | 6.5% |
生活必需品 | 1.8% | 2.5% | 5.8% |
不動産 | 1.7% | 3.3% | 6.1% |
エネルギー | 0.8% | -10.0% | -8.4% |
公益事業 | -0.6% | 6.4% | 11.1% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
バイオジェン | 26.0% |
アッヴィ | 13.9% |
ギリアド・サイエンシズ | 9.0% |
マイクロソフト | 8.0% |
フェデックス | 7.6% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
フォード・モーター | -8.0% |
サザン | -2.9% |
アルトリア・グループ | -2.8% |
コノコフィリップス | -2.4% |
デューク・エナジー | -1.4% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
新型コロナウイルスに対する警戒が高まった先々週末から急転換、中国による景気対策への期待が台頭したほか、米国のISM製造業景気指数、製造業受注、ADP雇用統計など改善を示す景気指標が続いて急反発となりました。
また、2/6(木)には中国が米中通商合意に沿って関税率を引き下げると発表、新型コロナウイルスの影響から合意の履行を不安視する向きもあったため好感されました。
一方、2/7(金)には米国の1月雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を上回りましたが、さすがに大幅な株価上昇に対する利益確定売りも出て反落となりました。S&P500指数は週間で3.2%の大幅上昇です。
業種指数騰落率では、好決算を受けて物色が強まっている「情報技術」、景気指標の改善を受けた「素材」、個別材料に加えて新型コロナウイルスも材料視されているとみられる「ヘルスケア」などが上昇しています。米10年国債利回りが反発したことから、「公益事業」は唯一の下落でした。
個別では、多発性硬化症治療薬「テクフィデラ」に関するマイランとの特許係争で有利な判断が出たバイオジェン(BIIB)、2/7(金)に発表した決算が良好で、アラガンの買収を今四半期に完了の予定としたアッヴィ(ABBV)が上昇しています。
経済指標では、米国の1月ISM製造業景気指数が前月の47.0から50.9へ大幅に改善、6ヵ月ぶりに景気拡大後退の境目とされる50を超えました。1月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比22.5万人増となって市場予想の同16.3万人増を大幅に上回りました。
今週の米国株式市場
中国での新型コロナウイルスへの感染拡大と工場の稼働再開状況を見守るほか、2/11(火)のニューハンプシャー州予備選挙、2/11(火)、2/12(水)のパウエルFRB議長の議会証言、2/14(金)の米国小売売上高などが注目されます。10-12月期の決算発表は、終盤です。
新型コロナウイルスについては、中国の「国家衛生健康委員会」が発表している感染者数の増加は、図表3の通りピークアウトしつつあります。武漢市で診察体制が整いつつある中で増加の勢いが増していないのは朗報と言えるでしょう。今後は武漢市以外での拡散が抑え込めれば、一安心となりそうです。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大が中国経済に与える影響は、主要なハードデータで確認できない状態が続きます。2/7(金)に発表予定だった1月の貿易統計は、1-2月分を合算するとして3/7(土)に発表が延期されました。鉱工業生産、小売売上高も春節の影響を排除する目的で1-2月分がまとめられるため(これは例年の措置です)、3/16(月)まで発表がありません。
ニューハンプシャーの予備選では、アイオワ州の党員集会でリードした中道のブティジェッジ氏、左派のサンダース氏の動向が注目されます。パウエルFRB議長の議会証言では、新型コロナウイルスの発生後に市場の金融緩和期待が強いため、これに沿う内容となるか確認が必要でしょう。
10-12月期決算は、2/7(金)までにS&P500指数採用企業の64%が発表を終え、EPSは前年同期比0.7%増(発表済と今後の予想を混合)と前週の同0.5%減から大きく改善しています。事前の市場予想に比べて4.6%上回って出てきており、3〜4%上回るのが通例ですので、今回の決算は良いと言えます。
テクニカルには、S&P500指数は1/22(水)を起点に1/31(金)まで約100ポイント調整した後、急反発して高値更新しており、「N字波動」が出る典型的なパターンにみえます。その場合は、1/31(金)の安値を起点として調整幅の2倍の上昇が見込めることになりますので、3,430ポイント辺りが上値の目安となります。
「N字波動」というのは、相場上昇に懐疑的な向きが調整局面で売るため株式需給が整理されて、ファンダメンタルズの要因で反発となった場合、その反発力が強くなって調整幅以上に上昇することが多いという経験則です。
一方、2/6(木)には高値を更新したものの、相場反転のシグナルとなりやすい「十字線」(直近3日では「捨て子線」)が出ています。これを重視するなら目先は反落が見込まれ、「ダブルトップ」の形成に向かいそうです。どちらになるか微妙なところです。
経済指標では、2/14(金)にユーロ圏実質GDP(前年比1.0%増の予想)、米国の1月小売売上高(前月比0.3%増の予想)、米国の1月ミシガン大学消費者マインド(99.3へ前月の99.8から若干低下の予想)、などの発表が予定されています。
企業決算では、シスコシステムズ、アプライドマテリアルズ、アリババグループ、エヌビディア、クラフトハインツ、ビヨンドミート、クラウドストライクホールディングスなどの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は先週決算発表を行った企業について先週号と同様のスクリーニング行い、条件を満たしたエスティーローダー(EL)を加えて、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン ドットコム(AMZN)、インテル(INTC)、ロッキード マーチン(LMT)を継続します。
【スクリーニング条件】
(1)10-12月期決算の売上が予想を1%、EPSが予想を5%以上上回った。
(2)10-12月期決算が前年同期比増収増益であった。
(3)アナリストの目標株価平均が過去4週に上方修正されている。
(4)時価総額が500億ドル以上のS&P500指数採用企業。
図表3 新型コロナウィルス、中国での感染者累計の増加数
注:中国「国家衛生健康委員会」が日々公表している中国の感染者数累計の前日比差分を計算したものです。
※中国「国家衛生健康委員会」の公表データをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (2/7) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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エスティ ローダー A(EL) | 208.96ドル | 36.4 | 【スキンケアが伸びる】 ・スキンケアの市場はベビーブーマーがユーザーとして残る一方で、ミレニアル世代や男性がユーザーとして増えつつあり、また、アジアを中心とした海外市場では中間所得層がより良い肌のための支出に積極的なことから成長市場になっています。同社の19年6月期の部門営業利益はスキンケアが75%を占め、スキンケア関連の筆頭格の会社と考えられます。 ・10-12月期決算は前年同期比15%増収、同21%増益と引き続き好調でした。主力のスキンケア部門が「アドバンス ナイト リペア」などの好調で前年同期比27%の増収、同37%の営業増益となって業績拡大をけん引しています。アジア・太平洋地域の売上が同30%伸びているため、香港でのデモや中国の新型コロナウイルスの影響が見込まれ、20年6月期の売上は前年比7〜8%増から同6〜8%増、調整後EPSは5.85〜5.93ドルから5.6〜5.7ドルにガイダンスが引き下げられました。ただ、影響が一巡すれば、強い業績拡大トレンドが継続すると期待されます。 | ||
マイクロソフト(MSFT) | 183.89ドル | 32.5 | 【クラウドのインフラサービスでアマゾンを急追】 ・クラウドのインフラを提供する企業としてはアマゾンに次ぐ2位の位置にあり、急速に追い上げています。メールソフトの「Outlook」、ビジネスソフトの「Office」などで企業のIT部門に接点があるため、クラウドの新規開拓営業に有利と考えられます。また、19年10月に米国防総省の100億ドル規模の案件をアマゾンと競ってマイクロソフトが獲得したことも、同社のクラウドが加速するきっかけとなる可能性が注目されています。 ・10-12月期決算は前年同期比14%増収、同37%増益と引き続き好調でした。全部門の売上が市場予想を上回って、売上は3%、EPSは14%それぞれ市場予想を上回りました。インテリジェント・クラウド部門が27%増収と成長をけん引、その中心である企業向けクラウドの「Azure」は前年同期比62%増と、7-9月期の同59%増を上回る伸びを記録しています。 | ||
アマゾン ドットコム(AMZN) | 2079.28ドル | 51.2 | 【年末商戦の好調で北米の利益が予想を上回る】 ・配送日数を短縮するための費用がかさんで利益を圧迫していますが、顧客囲い込みを進めるための先行投資と捉えられ、中期的な利益成長を高める施策と考えられます。一方、クラウドサービスは業界トップして引き続き高い成長が期待されます。また、独占禁止法の調査に係るリスクも、フェイスブックやアルファベットに比べて小さいと考えられます。 ・10-12月期決算は好調な年末商戦を受けて売上が前年同期比21%増、EPSも同7%増と7-9月期の減益から増益に転じて市場予想も大幅に上回りました。部門別の営業利益は、北米が19億ドル(市場予想は15億ドル)、海外が6億ドルの赤字(同9億ドルの赤字)、AWSが26億ドル(同25億ドル)でした。19年中は利益が伸び悩んだため株価は出遅れましたが、北米の通販事業の改善を受けて出遅れを縮める動きが想定できるでしょう。 | ||
インテル(INTC) | 66.02ドル | 13.3 | 【データセンター投資の復調から恩恵】 ・クラウドサービスの提供企業や通信キャリアがデータセンターへの投資を再び活発化したことを受けて業績が回復しており、このトレンドは20年に向けても継続すると期待されます。CPU分野で競合するアドバンストマイクロデバイセズが7ナノメートル技術によるCPUで攻勢をかけていることへの対応が課題となっていますが、一方で予想PERが低水準であることから投資妙味がありそうです。 ・10-12月期はデータセンター向けがけん引して売上は前年同期比8%増、EPSは同19%増と好調でした。データセントリックグループの売上は前年同期比19%増の72億ドルとなり、市場予想の64億ドルを大幅に上回りました。20年12月期のガイダンスは売上が約735億ドルで前年比2%増、EPSが約5ドルで同3%増と堅調が見込まれています。 | ||
ロッキード マーチン(LMT) | 439.17ドル | 18.1 | 【米国とイランの軍事的緊張から恩恵】 ・軍事用航空機・宇宙関連機器の大手メーカーです。軍需関連の売上が世界最大であり、また、同売上構成比も88%に達することから、米国および世界の軍事費が増加する場合にその恩恵を受ける確度が高く、代表的な軍需銘柄です。特に同社売上の25〜30%を占めるF-35ステルス戦闘機は、米軍(空軍、海兵隊、海軍)が2,500機近くを調達する計画で、20年度の予算でも重点調達品としてあげられています。 ・10-12月期決算は前年同期比10%増収、同21%増益と引き続き好調でした。主力の航空機部門が前年同期比9%増収となったほか、他の3部門もすべて増収と安定した伸びを示し、期末の受注残は1,440億ドルで前年比11%増加しています。20年12月期のガイダンス中央値は、売上が前年比6%増、EPSが同8%増と好調が持続する見通しです。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。エスティローダー、マイクロソフトは20年6月期、その他は20年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成