NT倍率の上昇が注目されています。NT倍率は日経平均株価(N)とTOPIX(T、東証株価指数)の価格比を取ったものですが、日経平均株価とTOPIXは同じように動くと見られていることからNT倍率の上昇は違和感を持って見られているようです。
また、日経平均株価とマザーズ指数(M)の価格比を取った、NM倍率も同様に上昇傾向にあります。日本株市場は全体として上昇傾向にあるのは事実ですが、その中でも日経平均株価が「独り勝ち」に近い状況にあることを示唆しています。
そこで、本レポートでは各指数の特色を確認したうえで、直近NT倍率、NM倍率が上昇してきたことを踏まえて今後の取引戦略について検討しています。
NT倍率とNM倍率 |
NT倍率
図1は直近3年間のNT倍率、日経平均株価、TOPIXの推移です。日経平均株価とTOPIXは2016年10月26日を起点として指数化しています。
NT倍率は2017年8月末を底に上昇してきていることがわかります。NT倍率は日経平均株価とTOPIXのパフォーマンス比ですので、NT倍率の上昇は日経平均株価のパフォーマンスがTOPIXのパフォーマンスを上回ってきたことを表しています。
なぜこのような差が生まれるのでしょうか。それは構成銘柄の違いが大きく影響すると考えられます。
日経平均は東証に上場する225銘柄をみなし額面に修正したものの単純平均で求められます。そのため、株価の高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすくなります。下記は2019年10月29日取引終了時点における日経平均株価の構成銘柄上位5銘柄とそれぞれの構成比率ですが、構成比率の合計は24.26%もあり、日経平均株価はこれらの株価の動向に強く影響されると言えます。
9983 ファーストリテイリング 10.74%
9984 ソフトバンクグループ 3.78%
8035 東京エレクトロン 3.55%
6954 ファナック 3.41%
9433 KDDI 2.78%
特定の銘柄に引っ張られやすい日経平均株価は日本の株式市場全体の指数とは言い難いですが、225銘柄で構成された株式ポートフォリオとして見なすと、いわゆる大型グロース(成長)株ポートフォリオと見なすことができます。
一方、TOPIXは日経平均に構成される銘柄を含む、浮動株時価総額加重平均で求められます。そのため、グロース(成長)株と対になるのはバリュー(割安)株によって構成されるブレンドと言い換えられます。※グロース(成長)株とバリュー(割安)株の判定はPBRなど、株価の割安指標で評価されるのが一般的です。
NT倍率が上昇を続けていた、すなわちグロース株で構成された日経平均がブレンド型のTOPIXよりパフォーマンスがよかったということは、グロース(成長)株優位の相場環境であったと解釈することができます。
NM倍率
では、同じくグロース株で構成されたマザーズ指数との関係でみてみるとどうでしょうか。図2は直近3年間のNM倍率、日経平均株価、マザーズ指数の推移です。図1と同様に日経平均株価とマザーズ指数は2016年10月26日を起点として指数化しています。
NM倍率もNT倍率同様に上昇してきていることがわかりますが、マザーズ指数は日経平均と異なり下落基調にあり、直近のNM倍率の上昇幅はより大きくなっています。
マザーズ指数はマザーズ市場に上場する全銘柄の時価総額加重平均によって算出されますが、新興の小型株は個人投資家にとっても取引しやすい銘柄といえるでしょう。それが下落基調にあるということは、個人投資家の物色の勢いが減退していることを表すのかもしれません。裏を返せば、現在の株高を支えているのは機関投資家や法人、海外勢であることの証左とも言えるでしょう。
投資に活かすなら |
大きく上昇したNT倍率、NM倍率を日経平均とTOPIX、マザーズ指数の乖離と捉え、各指数が上昇(乖離が拡大)した後は低下(乖離が縮小)するはず、という前提に立ち、NT倍率が一定の水準に達したら日経225先物を売り建てし、同時にTOPIX先物やマザーズ先物を買い建てるという投資戦略が考えられます。
しかし、前述のとおりNT倍率、NM倍率は長期的に拡大している、即ち大型・グロース株への物色が続いています。この傾向は今後も続く可能性はあり、具体的にどの水準まで行けばポジションを組成するのかという基準を設けることは難しいといえるでしょう。
ただし、短期的な乖離幅の拡大を投資機会に変えることは可能かもしれません。図1,2にはそれぞれNT倍率、NM倍率の25日移動平均線を掲載しています。当然ですが、NT倍率、NM倍率はともに移動平均線をなぞるように推移していますが、時折、移動平均線を大幅に上振れ・下振れしたあと、再び移動平均線に収れんするような動きをみせることがあります。
そこで以下のような投資戦略が考えられます。
NT倍率が25日移動平均線を大きく上回った
・日経平均を対象とするプット型eワラントを買い付け、TOPIX先物を買い建てる。
NT倍率が25日移動平均線を大きく下回った
・日経平均を対象とするコール型eワラントを買い付け、TOPIX先物を売り建てる。
NM倍率が25日移動平均線を大きく上回った
・日経平均を対象とするプット型eワラントを買い付け、マザーズ先物を買い建てる。
・日経平均先物を売り建て、新興株バスケット3を対象とするコール型eワラントを買い建てる。
・日経平均を対象とするプット型eワラントと新興株バスケット3を対象とするコール型eワラントを両建て
NM倍率が25日移動平均線を大きく下回った
・日経平均を対象とするコール型eワラントを買い付け、マザーズ先物を売り建てる。
・日経平均先物を買い建て、新興株バスケット3を対象とするプット型eワラントを買い建てる。
・日経平均を対象とするコール型eワラントと新興株バスケット3を対象とするプット型eワラントを両建て
今回のコールくん、プットくんの注目銘柄 |
コールくんが選ぶ〜注目銘柄
レポートにも書いているように日経平均は強いね。アノマリー通りハロウィンを過ぎてさらに上昇が加速することを期待しているよ。上昇トレンドが長く続くことも想定して、時間経過による減価がないレバレッジトラッカーを選んだよ。
投資金額に対するレバレッジ効果を見込んで単価が一番低い銘柄を選んだよ。
上昇トレンドが続くかぎり保有するよ。満期保有でもOKだね。
原油先物が55米ドルまで上昇すれば1.7円程度 で売却できる試算だよ。
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相場水準に比較的近い権利行使価格の銘柄を選んだよ。
2週間程度の保有で一旦手仕舞いを予定しているよ。
5円以上で売却するのが目標だよ。利食いができればタイミングを見て再エントリーも考えたいね。
- ※あくまでも現在の市場動向から推測した目安であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
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