6月9日の午後、米国市場ではアマゾンの株価が急落し、一時的に前日比8%を越す下落がありました。その後株価は持ち直しましたが、週明け12日の米国市場でもアマゾンは続落し、8日の終値から約4.5%の下落となりました。時を同じくしてエヌビディア、アップル、アルファベットなど米国株を牽引してきたハイテク関連株も下落しています。本稿では9日に起きたアマゾンの株価急落とハイテク関連株の下落を検証し、今後の見通しについて紹介しています。
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アマゾンの急落は“Fat Finger”なのか?
図1は8日から12日にかけてのアマゾンの株価推移(10分足)です。9日に不自然に急落していることが分かります。現地時間の9日の朝方に1,000ドルを超えていた株価が、午後2時50分には930ドルを割り込み、その直後に970ドル前後に戻っています。この下落について米国株式市場の関係者からは“Fat Finger”ではないか?という指摘がありました。“Fat Finger”(ファット・フィンガー)とは誤発注のことを言います。指が太っているとキーボードの別のキーを間違って押してしまう、ということに由来しているようです。つまり、アマゾンの急落は誤発注ではないか、という指摘です。
仮に誤発注だったとしても図1を見るとアマゾンの株価は朝から下げていますので、売りが優勢だったことには変わりはありません。9日はアマゾン以外にもアップル(約-3.9%)、テスラ(約-3.4%)、フェイスブック(約-3.3%)、アルファベット(約-3.4%)といった米国の主要ハイテク関連株も大きく下落しており、ナスダック総合指数もダウ平均が約0.4%高だったにも関わらず、約1.8%安となっていました。
図1:アマゾンの株価推移(6/8-6/12、米ドル、10分足)
出所:ロイターよりeワラント証券投資情報室作成
半導体関連株も売られたが、金融株は強かった
ナスダック上場銘柄のうち、比較的時価総額の大きい銘柄に注目すると、9日に下落が目立っていたのはエヌビディア(約-6.5%)、半導体製造工程における検査・計測装置のKLAテンコール(約-6.4%)、クラウドコンピューティングなどのシトリックスシステムズ(約-5.9%)、半導体大手のマイクロンテクノロジー(約-5.7%)、半導体製造装置大手のアプライドマテリアルズ(約-5.7%)などです。半導体の相場自体は大きく崩れたということはありませんでしたが、半導体関連株の下げが目立っていたのが特異的です。
一方で金融株、例えばJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなどはハイテク関連株、半導体関連株の大幅な下落にも関わらず9日に上昇しています。金融株は5月まで下落基調が続いており、ダウ平均の上昇に対して出遅れていたセクターです。
以上をまとめて考えると、大きく上昇していたセクターを売り、出遅れていたセクターを買うというセクターローテーションの動きだったと考えることができそうです。
表1:株価変化率(前日比)
名前 | ティッカー | 6月9日 | 6月12日 |
---|---|---|---|
エヌビディア | NVDA | -6.5% | 0.2% |
KLAテンコール | KLAC | -6.4% | -0.8% |
シトリックスシステムズ | CTXS | -5.9% | 3.2% |
マイクロンテクノロジー | MU | -5.7% | 2.0% |
アプライドマテリアルズ | AMAT | -5.7% | -0.9% |
アップル | AAPL | -3.9% | -2.4% |
テスラ | TSLA | -3.4% | 0.5% |
アルファベット | GOOG | -3.4% | -0.7% |
フェイスブック | FB | -3.3% | -0.8% |
アマゾン | AMZN | -3.2% | -1.4% |
アリババグループHD ADR | BABA | -2.0% | -0.3% |
JPモルガン・チェース | JPM | 2.4% | 0.0% |
ゴールドマン・サックス | GS | 1.7% | -0.2% |
今後の見通しと投資戦略
9日のハイテク関連株などの下落が単なるセクターローテーションの動きであるという前提であれば、これがハイテク関連株への押し目となり、再びハイテク関連株などに資金が向かって長期的な上昇トレンドを形成する可能性があります。この見通しを前提とするなら、次のハイテク関連株を対象原資産とするコール型eワラントを数カ月保有することを考えます。国内株ですとソフトバンクグループも加えることができるでしょう。ソフトバンクグループはアリババグループHやエヌビディアに出資しているためです。
<参考銘柄>
一方で、セクターローテーションの動きにしては荒っぽい値動きであったことや、14日に予定されていたFOMCで追加利上げが見込まれていたことから、今回の動きは単なるセクターローテーションの動きに留まらず、株式を売って債券を買うという投資家の資産配分変更の前兆と解釈することもできそうです。この見通しを前提とするなら、株式市場全体に対して下落圧力がかかると考えられますので、指数のプットが投資対象候補となるでしょう。
<参考銘柄>
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎(おのだ まこと)
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