まいど、「相場の福の神」こと藤本誠之です。今回、「福の神レポート」をスタートすることになりました。「福の神レポート」は、個人投資家の売買のヒントとなるように、藤本が株式市場の「半歩先読み」を行いレポートするものです。今後とも、よろしくお願いします。
好調な旧大証銘柄
2013年7月16日に東証と大証の現物株式市場が統合しましたが、大証単独上場銘柄など東証1部に新規上場した銘柄のパフォーマンスが好調です。
下記が、現物株式市場統合を発表した2012年10月29日の終値を100とした、日経平均株価と、現物株式市場統合によって東証1部に新規上場した38銘柄(旧大証1部単独上場の37銘柄と東証2部・大証1部の重複上場だった関西スーパー)の平均パフォーマンスの推移です。
図1:旧大証銘柄(38銘柄)の平均パフォーマンス
上昇の大きな要因として考えられるのが、「インデックス買い」です。今回は、この「インデックス」買いについて解説し、今後想定される株式市場の反応について、予想しましょう。
インデックス買いって何?
まずは、「インデックス買い」って何かを、解説いたします。
機関投資家や外国人投資家が株式投資を行う場合、2つの投資手法があります。
(1)アクティブ運用
個別銘柄の分析に基づいて、インデックスを上回るような投資成績を目指して運用することです。
(2)インデックス運用/パッシブ運用
ある特定の株価指数に連動させるように行う投資手法です。インデックスと同じ投資成績を上げることを目指して運用を行います。
「インデックス買い」とは、パッシブ運用のファンドがインデックス(特定の株価指数)に連動させるように株式を売買するときの買い注文のことです。買われる銘柄があれば、逆に売られる銘柄もあります。新規上場などの場合、買いはその新規銘柄に集中しますが、売りはそれ以外のすべての銘柄を幅広く薄く売るので個別銘柄へのインパクトは小さく、あまり目立たないことが多いようです。
現在、日本株式市場でインデックス運用の多い株価指数では、主に国内投資家が利用するのが、日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)です。また外国人投資家が主に利用するのは、MSCIインデックス(MSCI Barraが算出・公表している株価指数の総称)です。先進国やエマージング国、各地域や各国別、産業別や業種別など様々な指数があります。
今回は、TOPIXに絞ってご説明しましょう。
TOPIX(東証株価指数)
東証株価指数(TOPIX)は、東京証券取引所が、算出・公表する株価指数で、昭和43年4月1日における東証1部全体の時価総額を基準として現在の時価総額がどのくらい増減しているかを表すものです。東証1部に上場するすべての銘柄(※1)を構成銘柄とする浮動株基準の時価総額加重平均の指数です。
- ※1 新規上場間もない銘柄や整理ポスト入り銘柄は除く。
浮動株基準と言うのは、株式市場に流通しない固定株(大株主上位 10 位の保有株、自己株式等(相互保有株式を含む)、役員等の保有株、その他当取引所が適当とみなす事例(長期的又は固定的所有とみられる株式等))を除いた浮動株のみを指数の対象とすることです。
時価総額の大きい銘柄の比重が高い指数なので、自動車株やメガバンクなど金融株の影響を大きく受ける指数となります。
この東証株価指数(TOPIX)に連動するインデックス運用を行う場合、東証1部のほぼすべての銘柄を構成銘柄として、東証発表の浮動株比率を考慮した時価総額加重平均の比率で組み入れを行うことになります。
この場合、組み入れ銘柄や比率を変更するのは
- 東証1部に新規上場・上場廃止
- 東証の発表する浮動株比率が変更されたとき
- 公募・第三者割当増資や、自己株式償却などで発行済み株式数が変更する場合
などが考えられます。
これを確認するには、東京証券取引所の浮動株比率のページで確認できます。
基本的には、毎月5営業日目の16時以降に東証のWEBに掲載されます。
東京証券取引所 浮動株比率(東京証券取引所のWEBサイト)
通常の東証1部の新規上場銘柄の場合、上場月の翌月末に浮動株比率に0.75を乗じた割合でTOPIXに組み入れられます。しかし、現物株式市場統合によって新規に組み入れられる銘柄は、8月末に本来の浮動株比率に0.5を乗じた割合で組み入れられ、その後、10月末に本来の0.75を乗じた割合で組み入れられることになっています。
- 2013年7月末の東証1部の時価総額は約400兆7千億円、また浮動株ベースでの時価総額は、約252兆9千億円です。
- 2013年現在、TOPIX連動のパッシブ運用を行っている資金は、年金が約15兆円、投信が約3.5兆円など計20兆円強と推定されています。
これらのデータを元に試算を行うと、TOPIX型のパッシブ運用による買い需要が計算できます。
例えば、2013年7月に東証1部に新規上場したサントリー食品インターナショナル(2587)は、大まかな試算(※2)を行うと
20兆円(TOPIX型のパッシブ運用資金)×1兆1千億円(サントリー食品インターナショナルの8月21日時価総額×0.3(東証の浮動株比率)×0.75(調整係数)÷252兆9千億円(浮動株ベースの東証1部時価総額)=196億円
196億円÷3,560円(2013年8月21日終値)=約550万株となります。
- ※2 元々のTOPIX型パッシブ運用資金が市場推定値であるため、あくまで参考値です。
このように計算すれば、新規上場する銘柄については、どれぐらいの買い需要となるか試算できます。
図2:買い需要算出計算式(参考値)
コバンザメ投資法
大きな機関投資家のパッシブ運用に伴う売買を想定して投資する手法はコバンザメ投資法などと呼ばれます。
インデックス売買に伴う買い需要を計算して、その先回り買いを行うものです。その場合、買い需要と直近の売買高を比較してその比率が大きい銘柄に投資妙味があると言えるでしょう。直近の売買高が大きければ、多少「インデックス買い」は入ったとしても株価へのインパクトは小さいと考えられるからです。逆に売買高の小さい銘柄に、相対的に大きな買い注文が入れば、株価には大きなインパクトとなるからです。
しかし、確実に儲かる投資手法ではありません。事前に先回り買いを行っていても、パッシブ運用を行っている投資家が、すべてを構成比が変化する当日に売買するとは限らないからです。逆に思惑で上がりすぎていれば、コバンザメ投資家の売りだけで下落する場合もあります。
表1:2013年7月に東証1部に上場した銘柄
銘柄 |
銘柄名 |
TOPIX用 |
前市場 |
7月31日 |
8月21日 |
騰落率 |
---|---|---|---|---|---|---|
2399 |
0.2250 |
東証マザーズ |
696 |
737 |
5.9% |
|
3811 |
0.3375 |
ジャスダック |
882 |
928 |
5.2% |
|
2587 |
0.3000 |
新規上場 |
3,450 |
3,560 |
3.2% |
|
2410 |
0.4875 |
東証2部 |
113,400 |
109,800 |
-3.2% |
|
3654 |
0.1875 |
東証2部 |
1,367 |
1,300 |
-4.9% |
|
3655 |
0.1875 |
東証マザーズ |
1,367 |
1,176 |
-14.0% |
- 東証、Bloombergデータより、SBI証券投資調査部作成。
- 騰落率は、2013年7月31日終値と2013年8月21日終値より算出。
表2:現物株式市場統合後の旧大証銘柄騰落率上位15銘柄
順位 |
銘柄コード |
銘柄名 |
7月12日(終値) |
8月21日(終値) |
騰落率 |
---|---|---|---|---|---|
1 |
1811 |
173 |
242 |
39.9% |
|
2 |
4406 |
256 |
333 |
30.1% |
|
3 |
8244 |
315 |
396 |
25.7% |
|
4 |
5273 |
1,319 |
1,593 |
20.8% |
|
5 |
9046 |
352 |
419 |
19.0% |
|
6 |
4025 |
733 |
844 |
15.1% |
|
7 |
9052 |
420 |
469 |
11.7% |
|
8 |
5985 |
573 |
633 |
10.5% |
|
9 |
9936 |
3,125 |
3,445 |
10.2% |
|
10 |
7014 |
903 |
993 |
10.0% |
|
11 |
9319 |
935 |
1,015 |
8.6% |
|
12 |
4517 |
2,820 |
3,045 |
8.0% |
|
13 |
8163 |
605 |
653 |
7.9% |
|
14 |
1976 |
405 |
428 |
5.7% |
|
15 |
8077 |
275 |
282 |
2.5% |
|
|
参考 |
日経平均株価 |
14,506 |
13,424 |
-7.5% |
- 東証、Bloombergデータより、SBI証券投資調査部作成。
- 騰落率は、2013年7月31日終値と2013年8月21日終値より算出。
2013年7月に東証1部に上場した「表1」の6銘柄と、現物株式市場統合に伴う旧大証銘柄38銘柄の合計44銘柄が、2013年8月末に東証株価指数TOPIXの構成銘柄となります。今回、解説した「インデックス買い」が期待できる銘柄になります。
現物株式市場統合に伴う旧大証銘柄38銘柄については、2013年8月末でなく、2013年10月末も「インデックス買い」が入る予定です。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。