5/15(水)をもち、上場企業の決算発表がほぼ一巡しました。最近は取引時間中に発表を行う企業も多く、決算発表は投資家の立場からは気が抜けないイベントであると言えます。特にこの時期は3月決算銘柄の新年度の会社側予想が初めて公表されるため、株価へのインパクトが大きいのでなおさらです。
米中貿易摩擦の激化を背景に、日本の企業業績は踊り場を迎えています。内閣府の景気基調判断も6年ぶりに「悪化」となり、株式相場は令和に入ってから5/14(火)時点まで、日経平均ベースで前日比プラスで引けたことがない状況が続きました。5/15(水)はようやく「令和初」の上昇となりました。このような環境下、銘柄選定は慎重に、ファンダメンタルズの裏づけのあるものを選びたいと考えます。
そこで今週の「新興株ウィークリー」は、2019年3月期で業績が市場の期待に応え、2020年3月期も期待される銘柄を抽出すべくスクリーニングを行ってみました。足元の株価はそれらの銘柄でさえ下落基調となっている場合が多いようです。しかし、それらの銘柄は市場が反発に転じた場合、物色面でのリード役になる可能性がありそうです。皆さまの投資のご参考になれば幸いです。
それではさっそく、スクリーニングを行ってみたいと思います。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証マザーズ上場銘柄であること
(2)3月決算銘柄で、5/14(火)までに決算発表が終った銘柄であること
(3)2019年3月期経常利益が増益かつ事前の会社予想を上回った銘柄であること
(4)2019年3月期、2020年3月期(会社予想)ともに前期比5%以上(黒字転換を含む)の経常増益となっている銘柄であること
上記のすべての条件を満たした銘柄を掲載したものが表1となります。この表では、2020年3月期の会社予想経常増益率の大きい順に銘柄を並べています。なお(3)の条件については、2019年1〜3月期(第4四半期)に、米中貿易摩擦等を背景に業績下方修正リスクが急速に強まったものと推測されますが、逆にこの時期をくぐり抜けた上で2019年3月期の経常利益が事前の会社予想を上回った銘柄というのは、評価できるのではないかと「新興株ウィークリー」では考えます。
表1:マザーズの業績好調銘柄はコレ!?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄名 | 株価(円) 5月14日 |
19/3期 経常増益率 |
20/3期 会社予想 経常増益率 |
事業内容、注目点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
追加 | 3622 | ネットイヤーグループ | 675 | 黒転 | 283.5% | NTTデータ傘下会社、ネット活用営業支援 | ||
追加 | 4436 | ミンカブ・ジ・インフォノイド | 1,140 | 91.2% | 77.5% | 株式投資家向け情報サイト、出版事業 | ||
追加 | 4437 | gooddaysホールディングス | 3,740 | 104.4% | 22.8% | お部屋探しサイト・アプリの「グッドルーム」運営 | ||
追加 | 6556 | ウェルビー | 1,862 | 41.1% | 21.5% | 就労希望障害者への職業訓練や求職支援 | ||
追加 | 7060 | ギークス | 4,160 | 40.3% | 21.2% | フリーランスIT人材の派遣・紹介事業 | ||
追加 | 4390 | IPS | 1,200 | 22.3% | 18.8% | フィリピンでの通信回線提供事業など | ||
追加 | 9467 | アルファポリス | 2,237 | 79.2% | 17.9% | WEB投稿のライトノベル、漫画などの出版事業 | ||
追加 | 6033 | エクストリーム | 1,940 | 185.6% | 17.5% | ゲーム開発業者への技術者派遣や受託開発 | ||
追加 | 6193 | バーチャレクス・ホールディングス | 727 | 65.5% | 13.3% | コールセンターの運営受託、コンサルなど | ||
追加 | 2342 | トランスジェニック | 463 | 1728.6% | 13.1% | 創薬用マウス作製技術を持つバイオベンチャー | ||
追加 | 3137 | ファンデリー | 1,541 | 7.2% | 12.0% | 生活習慣病患者等への健康食宅配事業 | ||
追加 | 7062 | フレアス | 3,160 | 61.5% | 6.5% | マッサージサービスの提供および訪問看護 | ||
追加 | 7183 | あんしん保証 | 313 | 111.4% | 5.9% | 賃貸物件の家賃保証事業を全国展開 | ||
追加 | 4389 | プロパティデータバンク | 989 | 25.1% | 5.1% | 不動産管理向けのクラウドサービス提供 |
- ※表1は会社発表資料等よりSBI証券が作成。
それでは表1で抽出された銘柄のうち数銘柄について、チャートと事業内容のポイントを簡単にご紹介したいと思います。
ミンカブ・ジ・インフォノイド (4436)は、2019年3月に上場したばかりの会社です。2007年に開始したソーシャルメディアサービスの「みんなの株式」が事業基盤となっています。株価診断にいち早くAIを活用するなどの新しい試みが注目されます。株式だけではなく保険、外国為替、仮想通貨などへのサービスエリアの拡大に加え、金融機関向けソリューションサービス提供など、事業分野の拡大が見込まれます。業績はエリア拡大によるユーザー数の増大から、広告収入が拡大しており好調です。前期の経常利益はおよそ倍増、今期も77.5%増益を会社側は想定しています。
ウェルビー (6556)は、2017年10月にマザーズに上場した就労を希望する障害者に対して、職業訓練・求職活動・職場定着支援を行っている会社です。これまでは首都圏周辺の比重が高くなっていましたが、全国展開を進めており、就労移行支援事業所の「ウェルビー」は、2019年3月末で67事業拠点を有しています。障害者の就労は政府の重要な施策となっているうえ、同社独自の要因として全国展開の進展により、高い成長が期待できそうです。拠点拡大を背景に、業績は前期が41.1%経常増益、今期の会社側予想は21.5%増益と堅調です。
IPS(4390)は、2018年6/27(水)にマザーズ市場に上場しています。フィリピンでの通信事業サービス、在留外国人対象の人材紹介・派遣、医療・美容事業などユニークな事業内容となっています。2019年3月期は、フィリピンでのCATV事業のエリア拡大やインターネット接続サービスの開始が寄与したうえ、医療・美容事業も好調で、22.3%経常増益となりました。今期も会社側は18.8%増益と続伸を見込んでいます。
アルファポリス (9467)は、2014年10月にマザーズ市場に上場しています。同社が運営するWEBサイトに投稿された小説(中高校生や若者向けのライトノベル)や漫画などのコンテンツから、サイト内でのユーザー評価を参考に、書籍として出版して収益化するビジネスモデルです。2019年3月期の業績はライトノベル、漫画でヒット作が生まれたことに加え、赤字のゲーム事業部門の切り離し効果で79.2%経常増益と急回復、今期は17.9%増益を会社側は想定しています。
図1:ミンカブ・ジ・インフォノイド (4436)・日足
図2:ウェルビー (6556)・日足
図3:IPS(4390)・日足
図4:アルファポリス (9467)・日足
- ※図1から4は当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
東証マザーズ指数の5/14(火)終値は872.71と、5/7(火)終値953.70から8.5%の大幅な下落となりました。JASDAQ平均も2.7%の下落でした。日経平均は3.9%の下落でしたから、マザーズの大幅下落が目立ちました。世界の株式相場は、米中貿易協議において知財の取り扱いに関する合意が難航し、それを受けてトランプ大統領が中国からの輸入品2,000億ドルに対して関税率を10%から25%に引き上げると表明する一方、中国側も米国製品に対する報復関税を表明したことから波乱の色を強めています。日経平均株価は大型連休前の4/26(金)から5/14(火)まで7営業日続落となりました。
マザーズ市場の個別銘柄では、時価総額の大きいメルカリ(4385)、ミクシィ(2121)が大幅に下落し、マザーズ指数全体の下げにつながりました。メルカリは3Q決算で電子マネーの普及促進コストが膨らみ黒字化の期待が遠のいたこと、ミクシィは3月期決算発表で今期の会社側予想が大幅な減益となったことが背景です。その他では、やはり大幅な減益決算に加え、子会社での不適切会計処理があったことを発表したMTG(7806)が大きく下落しました。
JASDAQ市場も、時価総額の大きい銘柄が軒並み大幅に下落しました。中でも決算で今期の大幅減益予想を公表したハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)の下落が目立ちました。
※東証マザーズ指数について:東証マザーズ市場は近い将来東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。マザーズ指数は、マザーズ市場に上場する全銘柄の時価総額加重平均型の指数です。ただし、一部の時価総額の大きい銘柄の影響度が大きい点に注意を要します。ちなみに3月末のマザーズ市場の時価総額に占めるメルカリのシェアは9.2%、ミクシィが5.1%などとなっています。
図5:東証マザーズ指数(日足)
図6:JASDAQ平均(日足)
- ※図5、図6ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
表2:主要株式指標の騰落率(5/7〜5/14)
指数 |
終値(5/14) |
騰落率 |
---|---|---|
日経平均株価 |
21,067.23 |
-3.9% |
東証マザーズ指数 |
872.71 |
-8.5% |
JASDAQ平均株価 |
3,366.20 |
-2.7% |
表3:主要新興市場銘柄の騰落率(5/7〜5/14)
コード |
銘柄 |
終値(5/14) |
騰落率 |
---|---|---|---|
マザーズ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
4385 |
メルカリ |
2,864 |
-17.7% |
4592 |
サンバイオ |
4,080 |
-9.0% |
2121 |
ミクシィ |
2,123 |
-11.0% |
3479 |
ティーケーピー |
4,955 |
-0.4% |
3993 |
PKSHA Technology |
6,130 |
-3.8% |
JASDAQ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
2702 |
日本マクドナルドホールディングス |
4,860 |
-5.3% |
7564 |
ワークマン |
5,180 |
-6.2% |
6324 |
ハーモニック・ドライブ・システムズ |
3,575 |
-12.2% |
6425 |
ユニバーサルエンターテインメント |
3,220 |
-8.5% |
2782 |
セリア |
2,981 |
-11.0% |
直近上場銘柄・市場で話題の銘柄 |
|
||
3967 |
エルテス |
1,512 |
-3.1% |
4593 |
ヘリオス |
1,648 |
-12.2% |
6572 |
RPAホールディングス |
5,840 |
1.4% |
4384 |
ラクスル |
3,655 |
-14.4% |
7806 |
MTG |
1,614 |
-20.2% |
- ※表2・表3はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は5/7(火)終値と5/14(火)終値の比較による。時価総額は4月末基準。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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